JRA「超大物候補」アメリカンシードはグランアレグリアと共通点あり!? 超一流馬“量産計画”が「幻」に終わった悲劇……
24日、中山競馬場で行われたアレキサンドライトS(3勝クラス・ダート1800m)はアメリカンシード(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)が優勝した。
ハナを奪い、最初の1000mを60秒6で通過したアメリカンシード。不良馬場とは言え、ハイペースであったことに違いない。だが、脚色は衰えることなく、最後の直線では後続を5馬身突き放す完勝だった。C.ルメール騎手はムチを一度も入れることなく、手綱を持ったままで、途中で後続との差を確認する余裕まで見せている。
レース後、ルメール騎手は「前でまだ物見をしたり余裕がありました。自分の仕事が分かっていて賢い馬です」と話していることからも、底知れぬ能力を秘めていると考えられる。ダート界の新星として、注目すべき存在だろう。
デビューから芝レースを使われてきたアメリカンシードは、若葉S(L)で3着に入り、皐月賞(G1)の優先出走権を獲得した。だが、迎えた本番は12着に惨敗。そして、確勝を期して臨んだ芝2200mの1勝クラスは単勝1.9倍の断然人気に推されるも、9着と結果が振るわなかった。
そこで陣営が下した決断がダート転向である。主戦場をダートに移すと、5馬身差、7馬身差、5馬身差と3戦続けて圧巻の走りでオープン入りを決めた。
4歳世代のダート馬はカフェファラオ、ダノンファラオが重賞ウィナーとして君臨しており、2頭の共通点はアメリカンファラオ産駒ということだ。
その一方、同じ米国生まれのアメリカンシードはタピット産駒。テスタマッタ、ラビットランの2頭が重賞を制しており、グランアレグリアの母父であることから少しずつ日本の知名度も上がっている。とはいえ、まだまだ日本では馴染みの薄い血統だ。だが、米国ではリーディングサイアーに輝くなど、アメリカンファラオに負けない名種牡馬である。
そんなタピットは20歳の高齢馬ということで、これから多くの産駒が日本で活躍する可能性は高くないかもしれない。そのため、日本競馬界は早くからタピットの後継種牡馬に目をつけていた。
昨年、優駿スタリオンステーションを運営する株式会社優駿は2021年よりタピット産駒のタピザーを新種牡馬として導入することを発表した。
タピザーは現役時代にブリーダーズCダートマイル(G1)を優勝。また、種牡馬としても18年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に輝き、15戦13勝(G1・7勝)で引退したモノモイガールを輩出するなど、結果を残している。
まさにタピットの後継として、タピザーは日本のダート界を牽引することが期待された。
だが、来日を目前に控えた昨年12月に米ゲインズウェイファームで馬房内の事故により死亡。日本に来ることなく、生涯に幕を閉じたのだった。
もし、無事に来日することができていれば、アメリカンシードの活躍でタピザーはより脚光を浴びることになっていただろう。それだけに日本競馬界としてもタピザーの導入が幻に終わったのは、悔やまれる出来事である。