【桜花賞(G1)回顧】M・デムーロ騎手歓喜の雄たけび! 大本命メジャーエンブレム敗北
「ウオオオオォォォ!」
レース後、検量室に戻る前にM・デムーロ騎手が馬上で雄たけびを上げた。
勝ちたかった。昨年2月、JRA騎手免許を取得した際、最も勝ちたいG1に迷いなく「桜花賞」を上げたほど、このレースに対する思い入れは強かった。
この第76回桜花賞(G1)があった4月10日は愛娘の誕生日。ジュエラーという非凡な”宝石”と出会ったデムーロ騎手にとって、今年の桜花賞に懸ける意気込みは人一倍だったはずだ。状況はまだシンハライトとの写真判定の最中だったが、乗り役にしかわからない確信のようなものがあったのだろう。喜びを爆発させていた。
レースは特に大きな出遅れもなく各馬がスタートしたが、単勝1.5倍の大本命メジャーエンブレムがハナを奪わなかったことで、阪神競馬場全体にどよめきが走った。
さらにはビービーバーレルやソルヴェイグなど、メジャーエンブレムの他に逃げる可能性のあった馬たちも積極的に行かない。最終的に集団を引っ張ったのが格下のカトルラポールの”初逃げ”という異様な流れでスタートした。
2番人気のシンハライトは中団、3番人気のジュエラーは後方から2頭目。レースは前半の1000m通過が59.1秒と、決して速くないペースで推移している。
3コーナーから4コーナーに掛けて各馬がいよいよペースアップし始めるが、先団を見るような形でレースを運んでいたメジャーエンブレムは、早めの進出を開始しようにも進路がない。それどころか進路を探している内に、中団まで位置取りが下がってしまった。
直線に入るとメジャーエンブレムの外側には、もうシンハライトがいる。メジャーエンブレムも必死に前に出ようとするが、今度はラベンダーヴァレイに外から蓋をされ、またも前に出られない。
メジャーエンブレムが狭い所を割ってなんとか前に出たが、その時にはもうすでにシンハライトの方が前に出ていた。切れ味で劣るメジャーエンブレムにとっては、この時点で万事休す。鞍上のC・ルメール騎手にとっても、完全に想定外の展開だったはずだ。
最後の200mを切って、力強く先頭に躍り出たシンハライト。最大のライバル・メジャーエンブレムを競り落とし、もう桜の戴冠は目の前に迫っていた。