JRA M.デムーロは「何故」ランドオブリバティの依頼を受けたのか。「あれは乗りたくないね」2億円馬「騎乗拒否」から3年……「危険な賭け」に出た理由
「あれは、乗りたくないね――」
3年前の1月。武豊騎手がパーソナリティを務める『武豊TVII』(フジテレビ系)に出演した際、M.デムーロ騎手はきっぱりと”騎乗拒否”した。
話題に上っていたのは、新馬戦を3馬身半差で圧勝したダノンマジェスティ。前年の皐月賞馬アルアインの全弟であり、2016年のセレクトセールで2億2000万円(税抜)で取引された当時話題の大物だった。だからこそデムーロ騎手の態度には、武豊騎手からも「乗りたくないの!?」と驚きの反応があったのだ。
「危ない、ゴールの後が……」
ただ、それには理由があった。デビュー戦で単勝1.4倍の支持に応えて白星発進したダノンマジェスティだったが、最後の直線で外側へ斜行……。“暴走”はゴール板を過ぎても収まらず、コーナーを曲がり切れずに外ラチまで逸走すると、最後は鞍上の和田竜二騎手が抑えて何とか事なきを得た。
レース後、和田騎手が「(まともに走れるようになるまで)時間が掛かると思います」と言えば、管理する音無秀孝調教師も「まだ訳が分かってなくて、ピクニックに来てるような感じ」とコメント。デムーロ騎手は、まさにそれを目撃していたというわけだ。
あれから3年が経った17日、先日のきさらぎ賞(G3)で3着したランドオブリバティ(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)の陣営から、3月のスプリングS(G2)に挑むことと、デムーロ騎手との新コンビが発表された。
ランドオブリバティといえば、昨年末のホープフルS(G1)の最終コーナーで大きく外に逸走。外ラチまで直進すると、最後は鞍上の三浦皇成騎手を落馬させてしまった曲者だ。
前走のきさらぎ賞は、これまで積極的に前に行って結果を残してきたランドオブリバティをまったく馬群に入れず、ほぼ最後方から直線だけの競馬で3着。三浦騎手が最大限警戒して大きなアクシデントはなかったが、この内容で春のクラシックを戦うのは現実的ではなかったのだろう。陣営は、デムーロ騎手へのスイッチを試みたというわけだ。
「正直、デムーロ騎手が依頼を受けたことにまず驚きました。前走のきさらぎ賞で逸走は見られませんでしたが、左にもたれるランドオブリバティにとっての課題は、きさらぎ賞のような左回りではなく右回りです。
そういった点で次走のスプリングSは、昨年末のホープフルSと同じ右回り。まさに真価が問われる舞台ですが、同じ中山の皐月賞(G1)を戦うためには避けては通れないことからも、陣営がここを使う意図はわかります。
ただ、同時にホープフルSのように大きく逸走する可能性もあるわけで、騎乗するジョッキーにとっては決してリスクが低い選択とは言えないでしょう」(競馬記者)
かつて、あくまで仲間内の会話だったとはいえ”問題児”ダノンマジェスティの騎乗を拒否したデムーロ騎手が、一体なぜここに来て似たようなランドオブリバティの騎乗依頼を受けたのか。そこには2頭の期待度の高さ以外の「理由」があるという。