JRA川田将雅「無の境地」で戴冠! 高松宮記念(G1)ダノンスマッシュ「あえて何も考えず、馬の走りたいように」国内8度目のG1挑戦でたどり着いた「秘策」とは
28日、中京競馬場で行われた高松宮記念(G1)は、2番人気のダノンスマッシュ(牡6歳、栗東・安田隆行厩舎)が優勝。昨年、香港スプリント(G1)を制した世界のスプリンターが、待望の国内G1制覇を成し遂げた。
降りしきる雨の中で行われた18頭立て芝1200mのレース。抜群のスタートを決めた昨年の勝ち馬モズスーパーフレアが敢然とハナに立つ流れの中、ダノンスマッシュは中団から末脚に懸ける競馬。モズスーパーフレアの単騎逃げとなったレースは、前半の600mを34.0秒で通過。同じく重馬場で行われた昨年は34.2秒で通過しており、やや速いペースとなった。
最後の直線を迎え、内ラチ沿いから粘りこみを図るモズスーパーフレアを各馬が追撃し始めるが、馬場の悪いところを通った先行勢に目立った伸びがない。残り200mを切ったところで先頭はまだモズスーパーフレアだったが、内からスルスルと馬群を抜けてきたインディチャンプが襲い掛かる。
さらに馬場の良い外から、レシステンシアとダノンスマッシュが強襲。最後は外の2頭の叩き合いとなったが、ダノンスマッシュが力強く前に出たところがゴールだった。
「昨年末のホープフルS(G1)をダノンザキッドで勝った際、師匠の安田隆行厩舎の馬で初めてG1を勝ったこともあって、勝利騎手インタビューでは『師匠に今まで迷惑をかけた』と涙していた川田騎手。その脳裏には、なかなかG1を勝てなかったダノンスマッシュへの思いもあったはず。
そんな中で、香港に遠征したダノンスマッシュがR.ムーア騎手の手で香港スプリントを勝ち、世界のスプリンターに輝いたことは、川田騎手にも主戦騎手として思うところがあったと思います。そんな川田騎手からすれば、今回はまさに負けられないレース。馬の力を信じた会心の騎乗だったと思います」(競馬記者)
「昨年末、香港でG1を勝ちましたけど、国内で勝つことができていなかったので、国内でまたタイトルを重ねることができてよかったなと思います」
目に見えない「壁」を突き破った。ダノンスマッシュは、これまで国内のG1に挑むこと7回。スプリンターズS(G1)では3着、2着と惜しい競馬が続いていたものの、高松宮記念では4着、10着と結果が出ていなかった。
そんなダノンスマッシュに川田騎手がたどり着いたのは「あえて何も考えず、馬の走りたいように走ってこよう」という馬を信じた“無”の境地だった。
スタートから出たなりでしっかりと折り合いをつけると「並び的にも目の前にレシステンシアがいて、いいリズムで道中運ぶことができたと思います」と語った通り、最後の直線を迎えるまでに馬の力を100%引き出す準備が整っていたことが大きな勝因となった。
「4コーナーでの手応えも抜群によかったですし、直線、道ができてからはレシステンシアと長く競り合う形にはなりましたけど、最後までしっかり意地を見せてくれて、勝ちきってくれて何よりです」
レース後の勝利騎手インタビューでそう語った川田騎手の目に涙はない。むしろ会心の勝利を挙げた充実感に満ちた表情だった。6歳にして、ついに国内スプリント界の頂点に立ったダノンスマッシュと川田騎手。目指すは父ロードカナロアのような絶対王者だ。