有馬記念、「必勝の1枠1番」武豊キタサンブラックついに敗れる。度重なる過剰な幸運がアイドルホースの「天命」に落とした影

 26日に中山競馬場で行われた第61回有馬記念(G1)。ゴール前で上位人気3頭がデットヒートを見せた、今年の競馬の総決算を飾るに相応しい最高のレースだった。

 だが、それが勝負事である以上、どうしても明暗は付きまとう。どれだけ素晴らしい戦いを繰り広げようとも、レース後には「勝者」と「敗者」として明確に振り分けられるのが競馬の宿命だ。それは今回の有馬記念でも、当然例外ではない。グランプリを制したサトノダイヤモンドは、自身の評価を早くも歴史的名馬の領域にまで押し上げようとしている。

 ただ、その一方で今回のレースで最も「負けるわけにはいかなった」のは、最後の最後まで勝ち馬に抵抗したキタサンブラックだったのではないだろうか。

 オーナーが演歌界の大御所・北島三郎であり、主戦も国民的知名度を誇る武豊。圧倒的な存在感を放つコンビに導かれ、春の天皇賞とジャパンCを制したキタサンブラックは今年の競馬を席巻。その勢いや人気は、かつて競馬ブームを引き起こしたオグリキャップやディープインパクトらの領域に迫ろうとしていた。

 ただ、そのためにもキタサンブラックは有馬記念を勝ち、年度代表馬の座を獲得することが必要だったように思える。

 もし本馬が有馬記念を勝っていれば、年間G1を3勝でモーリスに並んでいた。その上で歴代の「年度代表馬」の傾向を踏まえれば、キタサンブラックに分があったことは間違いなかっただろう。名実ともに国内最強を示し、日本競馬の悲願である来年の凱旋門賞へ。おそらくはこれが陣営の思い描いていた最高のプランであっただろうし、達成できれば国民的な人気を得られていたのかもしれない。

 だが、実際にキタサンブラックは敗れた。それもある意味では「敗れるべくして、敗れた」ようにも思えた。

 無論、今回は見た目にもキタサンブラックにとっては厳しい展開であり、そういった意味で敗れたということもできるだろう。ただ、筆者が述べたいのは、この有馬記念においてのキタサンブラックは、これまでと微妙に「立場」が異なっていたように思えたことだ。

 その”きっかけ”となったのが11月のジャパンC。それもレースではなく「枠順」が決まった際だ。

 あえて振り返ると、キタサンブラックの枠順は自身のキャリアで4度目となる「1枠1番」だった。それも今年に入ってから3度目だ。無論、いくら経済コースを回る権利を得たからといって、それで必ずしも有利になるわけではない。もしスタートで後手を踏むなどしてライバルに囲まれれば、何もできずにレースを終える可能性もある。この秋のスプリンターズSのビッグアーサーなどは、その典型といえるだろう。

 しかし、キタサンブラックは「1枠1番」で3戦負けなしという実績を誇っていた。

 その中には天皇賞・春も含まれており、そうした背景が競馬ファンに「またか」という意識をより強くさせたような印象があった。公開非公開にかかわらず、枠順抽選は公正に行われているが、人は目に見えないものに対して万全の信頼を置くことはできず、逆に疑念の対象にもなりやすい。メディアが大きく取り上げたこともあって、一部のファンからは疑問の声が噴出し始めていた。

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