有馬記念の勝敗を決した「影の主役」とは。日本競馬に馴染みのない文化「組織力」に潰されたキタサンブラックにファンからは賛否両論
実際、レース中にサトノノブレスの鞍上だったシュミノー騎手はサトノダイヤモンドを意識する仕草を随所に見せており、無謀なスパートを開始する直前にも何度もサトノダイヤモンドを振り返って邪魔をしないように細心の注意を払っているように見えた。
さらにレース後、勝ったルメール騎手とがっちりと握手。同じサトノの馬の騎手として、という見方もできるが、やはりそこには”連携プレー”で結果を残した充実感のようなものが満ちていた。
今年の競馬で「連携プレー」といわれて、すぐに浮かぶのがこの秋の凱旋門賞だ。
日本からはマカヒキが挑戦した今年の凱旋門賞。結果的にマカヒキが大敗する一方で、優勝したファウンド、2着ハイランドリール、3着オーダーオブセントジョージは、すべてオブライエン調教師の管理馬だった。
この上位独占は明らかな連携プレーによる結果がもたらしたものだが、レース後、世界中のファンやメディアからは非難どころか、むしろ完璧なコンビプレーの技術の高さに称賛が集まった。
つまり、同じ競馬でも日本と世界では文化が異なるのだ。
そして、シュミノー騎手はその凱旋門賞が開催されるフランスから短期免許で初の来日を果たした騎手である。もしかしたら、明確なアシスト行為が日本競馬に浸透していないことを深く認識していなかったのかもしれない。
今年の3月には、こちらも短期免許で初来日を果たしていたメキシコのL.コントレラス騎手が禁止薬物使用より騎乗停止処分を受けている。母国で落馬負傷した際に使っていた薬が、日本で禁止されているものだったという過失だが、これも日本と世界の競馬の文化の違いがもたらした問題だろう。
無論、世界中から数多くの騎手が短期免許で来日するようになった現状、こういった問題が起きないように日本競馬が世界に歩み寄っていく姿勢は今後も必要になって来る。
だが、「郷に入っては郷に従え」ということわざがあるように、来日する世界の騎手たちにもしっかりと日本競馬のルールを意識させることが必要なのは間違いないだろう。管理するJRAは来年から短期免許取得の基準をよりシビアにするらしいが、実績面以外の管理徹底も必要なのかもしれない。
(文=浅井宗次郎)