JRA 武豊とトウカイテイオー「数奇なドラマ」の交差。皐月賞(G1)最有力エフフォーリアとの「共通点」は稀に見る柔軟性
実はこの年は、無敗の三冠を達成するなど「皇帝」として名を馳せたシンボリルドルフが引退し、種牡馬生活を開始した初年度だった。そこでトウカイローマンの関係者は、引退予定のオークス馬の配合相手に相応しいとしてルドルフの種付け権を購入。
ところがトウカイローマンが現役続行となったことで、種付け権は宙に浮いてしまったのだ。そこでトウカイローマンの代役として抜擢されたのが、すでに繁殖入りしていた妹のトウカイナチュラルだった。
それこそが、後に「皇帝」シンボリルドルフの代表産駒として名を馳せる「帝王」トウカイテイオーの母である。
育成時代から非常に高い柔軟性が注目されたトウカイテイオーは、デビュー戦を1番人気に応えて快勝すると、そのまま4連勝。無敗のまま皐月賞で5連勝を達成し、鞍上の安田隆行騎手は父シンボリルドルフの岡部幸雄騎手に倣い「まずは1冠」を意味する人差し指を高々と上げた。
だが、トウカイテイオーはその後、無敗のまま日本ダービー(G1)も制するが、骨折により父子無敗三冠の夢は絶たれた。
あれから30年後。若き新鋭・横山武騎手が「なかなかいない」と評する柔軟性を持つエフフォーリアが、無敗のまま皐月賞に挑む。その最大のライバルとなる2歳王者ダノンザキッドを手掛けているのが、トウカイテイオーの主戦騎手だった安田調教師というのだから、競馬はやはり面白い。
ちなみに横山武騎手と安田調教師、どちらが皐月賞を勝ってもクラシック初制覇ということになる。果たして、軍配はどちらに上がるのか。それともまったく異なる“ドラマ”を持った人馬が、新たな世代の主役に躍り出るのか。
今年も牡馬クラシックが幕を開ける。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。