藤沢和雄調教師「来年こそ悲願のクラシック制覇へ!名伯楽が貫いた『信念』がもたらした『3本の矢』」~2017年のキーマン Vo.2~
それまでの藤沢厩舎は、昨年も重賞勝利がわずか2勝。今年も、年明け早々に愛知杯(G3)を勝っただけだった。フローラS制覇はそれ以来の重賞勝利となったが、大きかったのはその圧勝劇がオークストライアルで実現できたこと。
言い換えれば、続くオークス(G1)を大きく引き寄せる勝利になったということだ。
結局、オークスでチェッキーノは勝ったシンハライトにクビ差及ばなかった。だが、G1の舞台で藤沢厩舎が中心視され、メディア等から強くスポットが当たったのは本当に久しぶりのことだった。
その後、チェッキーノは左前脚屈腱炎を発症し引退を余儀なくされる。藤沢厩舎に再び暗雲が立ち込めようとしたが、それを振り払ったのが「16冠ベビー」として話題を集めた世界的良血馬のソウルスターリングだ。
ただ、述べるまでもなく、超良血馬が必ずしも活躍するわけではないのが競馬である。
特にソウルスターリングのような日本で実績のない良血馬は、基本的にデビュー前に騒がれるだけ騒がれて、デビュー戦で負ければどこ吹く風といった状況になるのがオチだった。実際に近年の藤沢厩舎も数多くのマル外で同じような失敗を重ねており、レベルが上がった今の日本競馬では、昔のようにマル外が簡単に通用しなくなっている。
しかし、ソウルスターリングが過去のマル外と異なっていたのは、父が歴史的名馬のフランケルであったこと以上に、デビュー戦をしっかりと快勝したこと。そして何よりもスピードが優先される日本のマイル戦でG1を勝ち切ったことである。
ソウルスターリングが無敗で阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制し、2歳女王に輝いたことによって一躍脚光を浴びた藤沢厩舎。
2014年の秋の天皇賞以来となるG1制覇は、厩舎の全盛を支えたマル外によってもたらされたことからも、世界中から新たな血統を積極的に取り入れる”信念”を曲げなかった藤沢厩舎ならではの勝利といえる。
さらに、その翌週には管理馬のサトノアレスが朝日杯フューチュリティS(G1)を制覇。2週連続のG1制覇だけでなく、史上初の2歳G1ダブル制覇を成し遂げると、完全に勢いづいた藤沢厩舎は年末のホープフルS(G2)もレイデオロで勝利。
結局、ここ10年では最高の成績となるG1レース2勝を含む重賞5勝を上げて2016年を終えた。