JRA 無敗三冠より「三強」が強い怪現象!? 宝塚記念(G1)コントレイルVSデアリングタクト実現も…… 歴史的名馬に立ちはだかる「最強世代」の壁
先週、香港のクイーンエリザベス2世C(G1)を3着に敗れたデアリングタクト(牝4、栗東・杉山晴紀厩舎)が、6月27日の宝塚記念(G1)を予定していることがわかった。
同レースにはコントレイルも出走を予定しており、昨年のジャパンC(G1)に続いて無敗三冠馬2頭の対決が実現、競馬ファンにとって非常に楽しみな一戦となりそうだ。
だが、史上初となる同年での牡牝三冠馬2頭が、厳しい現状に置かれていることも事実である。
「三冠馬」とは同世代で突出した能力の持ち主の証明でもあり、日本競馬史上でも牡馬は8頭、牝馬は6頭のみ。この看板を背負うからには、古馬となってからも頂点であり続けることが求められる。望まれるのはやはり、他馬を圧倒するようなパフォーマンスだろう。
最強の座を懸けてアーモンドアイに挑んだジャパンCでコントレイルは2着、デアリングタクトは3着と揃って返り討ち。敗れたとはいえ、芝9冠の偉業を達成した名牝が相手では仕方のない部分もあった。
しかし、確勝を期したはずの今年、コントレイルが大阪杯(G1)で3着、デアリングタクトは金鯱賞(G2)で2着、クイーンエリザベス2世Cでも3着と連敗してしまった。善戦したことは確かだが、物足りなさを感じてしまうのはやむを得ない。
宝塚記念には昨年の春秋グランプリを制覇したクロノジェネシスや、デビューから無傷の6連勝で大阪杯を制したレイパパレも参戦を予定しており、決して楽な相手関係ではない。
その一方で、無敗三冠馬より一つ上の世代の牝馬が、実はかなりのハイレベルだったことも見逃せない。
2019年の三冠を争ったこの世代は桜花賞(G1)をグランアレグリア、オークス(G1)をラヴズオンリーユー、秋華賞(G1)をクロノジェネシスが分け合った三強世代でもあった。
グランアレグリアは昨年の安田記念(G1)でアーモンドアイ相手に2馬身半の差をつける完勝を演じると、クロノジェネシスはJRA史上11頭目となる同一年での春秋グランプリ制覇、牝馬の達成はリスグラシューと2頭のみという大偉業だった。
さらにオークス以来、連敗続きで精彩を欠いていたラヴズオンリーユーも京都記念(G2)で約1年7か月ぶりの勝利を挙げると、海外遠征したドバイシーマクラシック(G1)を3着、クイーンエリザベス2世Cでデアリングタクトを破り、完全復活の気配を見せている。
牝馬クラシックで活躍した馬が古馬となって苦戦を強いられることは、これまでも珍しくなかった。そんな牝馬に活躍の場を増やすため、1996年にはエリザベス女王杯(G1)が3歳牝馬から3歳以上牝馬に条件が変更され、2006年には牝馬限定戦のマイルG1・ヴィクトリアマイルが創設された経緯もある。
それだけに、古馬となっても牡馬相手に色褪せない実績を残す三強は異質な存在にすら映る。
これに対し、コントレイルやデアリングタクトは無敗の三冠馬とはいえ、古馬となってのインパクトはファンが望む三冠馬の姿と乖離している印象は拭えない。「三冠馬」という称号に名前負けしないためにも、最強馬決定戦といえる顔触れが揃ったドリームマッチで求められるのは勝利の二文字となる。
最強牝馬世代といっても過言ではないこの壁を、三冠馬2頭は乗り越えられるだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。