JRA 天皇賞・春(G1)単勝「159.6倍」の大波乱再び!? オルフェーヴル産駒がもたらした偶然に蘇る「9年前」の悪夢

 遡ること9年……。2012年4月29日に行われた天皇賞・春(G1)は、まさかの結末に京都競馬場が異様な空気に包まれた。

 前年のクラシック三冠馬で、有馬記念(G1)も制したオルフェーヴルが惨敗。単勝1.3倍と断然人気に推されたが、後方のまま11着に敗れたからである。

 前哨戦の阪神大賞典(G2)で勝利を逃したオルフェーヴルだが、そのレース内容が圧巻。天皇賞・春で圧倒的支持を集めたのも、この衝撃的な光景がファンの脳裏に焼き付いていたからだろう。

 12頭立てとなった阪神大賞典で、オルフェーヴルは大外の8枠12番。中団の前でレースを進めたオルフェーヴルは、かかり気味に1周目のスタンド前ホームストレッチで2番手に押し上げると、2周目の向正面で早くも先頭に立った。

 しかし、勝負どころの3コーナーでは曲がり切れずに外側へと逸走。万事休すかと思われた状況から一転、4コーナーでは再び後方馬群に取り付き、ロスなく立ち回ったギュスターヴクライの2着と好走したのである。

 迎えた天皇賞・春でも、大外8枠18番からの出走となったオルフェーヴル。前走の失敗を糧に後方に控えた主戦の池添謙一騎手は、道中の折り合いに専念する作戦をとった。

 レースはゴールデンハインドが大逃げを打ち、それに続いたビートブラックが後方を大きく突き放す展開。10馬身ほど離れてナムラクレセントが続き、4番手以降はさらに10馬身ほど離れた縦長の隊列となった。

 2周目の3コーナーでは前の2頭と後続の差は15馬身ほどとなり、ゴールデンハインドを交わしたビートブラックが先頭に立つ。最後の直線でもビートブラックの脚色は衰えず、そのままゴール。外に持ち出し追撃を開始したオルフェーヴルは末脚不発に終わった。

 単勝1.3倍のオルフェーヴルに対し、ビートブラックは159.6倍の人気薄。14番人気のダークホースが春の盾を手にし、大波乱の結果となった。

 それから9年が経過し、今年は阪神競馬場で行われる天皇賞・春。オルフェーヴルの血を受け継いだオセアグレイト(牡5歳、美浦・菊川正達厩舎)、メロディーレーン(牝5歳、栗東・森田直行厩舎)、オーソリティ(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)の3頭は、偶然にも揃って父と同じ8枠に入った。

 特にメロディーレーンで挑む池添騎手は、オルフェーヴルの主戦ジョッキー。このレースに懸ける思いも一入なのではないだろうか。

 3頭のオルフェーヴル産駒は、父の無念を晴らすことができるのか。阪神競馬場という父とは違う舞台で、どのようなドラマが待ち受けているのか楽しみにしたい。

(文=北野なるはや)

<著者プロフィール>
 某競走馬育成牧場で働いた後、様々なジャンルの仕事で競馬関連会社を転々とする。その後、好きが高じて趣味でプログラミングを学習。馬券には一切のロマンを挟まないデータ派であるが、POG(ペーパーオーナーゲーム)では馬体派という奇妙な一面も持つ。

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