JRA C.ルメールが川田将雅より勝るものとは……。京都新聞杯(G2)レッドジェネシス神騎乗は「意識改革」の賜物か
まさに神騎乗だった――。
8日、中京競馬場で行われた京都新聞杯(G2)は、川田将雅騎手が騎乗したレッドジェネシス(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)が優勝。1600勝目のメモリアルを重賞制覇で飾った。
レースは11頭立ての芝2200m戦。8枠10番と外に入ったレッドジェネシスは、大方の予想通り後方からの競馬となった。
ブレークアップがハナを叩くかに思われたレースは、ルペルカーリア騎乗の福永祐一騎手が1コーナーで先頭に立つ。
一方、レッドジェネシスに騎乗した川田騎手は、レース後に「この流れなら追いかけなくてもいいと思い、リズム良くいけました」と話した通り、最初の1コーナーで馬を最内に入れるとじっくりとスタミナを温存。3コーナーから4コーナーにかけて馬群を縫いながら少しずつ外に持ち出すと、先頭集団を射程圏に入れて直線を迎えた。
コーナーでインの利を活かし、後続を3馬身ほど突き放したルペルカーリアの福永騎手に対し、後方を進みながらもコーナーでのロスを最小限に抑えた川田騎手。「直線に入っても手応えは良かったですし、あとはルペルカーリアを掴まえるだけだと思いました」との言葉通り、最後は2着ルペルカーリアに3/4馬身差をつけゴールを駆け抜けている。
これが今年の重賞10勝目となった川田騎手は、この日4勝の固め打ち。リーディングトップのC.ルメール騎手の背中も少しずつ見え始めた。
この日、ルメール騎手は東京競馬場で騎乗するも1Rで挙げた1勝のみ。先週の段階で19勝差だった2人の差は、16勝差に縮まっている。
2017年から4年連続でリーディングジョッキーに輝いているルメール騎手。急成長を遂げた川田騎手も健闘はしているものの、近2年はリーディング2位に甘んじているのが現状だ。
2019年はトップのまま秋競馬に入ったものの10月の最終週に追いつかれ、最終的には12勝差。2020年も4月末時点では川田騎手がルメール騎手をリードしていたが、川田騎手は『netkeiba.com』で連載中のコラム『VOICE』にて、その時の心境を「毎週毎週、『このラインナップなら何勝しなければいけない』と自分に数字を課し、まるで自分で自分の首を絞めるような精神状態で週末を迎えていました」と語っている。
責任感から大きなプレッシャーを感じていたという昨年は、最終的に37勝という大差。しかし、同コラムにて「責任感にとらわれ過ぎない」と意識改革した今年の川田騎手の今後の進化が楽しみだ。
川田騎手が「レース後は怒っていることもヘコんでいることもありますが、その波が明らかに小さい」と話すルメール騎手。絶対に敵わないところとして「人柄です」とも語っている。
「昨年、一昨年に比べると、少しだけ楽な気持ちで週末を迎えることができています」
意識の変化から、現状をそのように語った川田騎手。ルメール騎手の安定した成績の答えが精神的部分にあるのだとすれば、今年は一皮むけた川田騎手の悲願達成も期待できるのかもしれない。(文=北野なるはや)
<著者プロフィール>
某競走馬育成牧場で働いた後、様々なジャンルの仕事で競馬関連会社を転々とする。その後、好きが高じて趣味でプログラミングを学習。馬券には一切のロマンを挟まないデータ派であるが、POG(ペーパーオーナーゲーム)では馬体派という奇妙な一面も持つ。