C.ルメールや池添謙一でも到達できない領域……福永祐一が実現する「理想像」に各方面から絶賛の嵐!
昨年の三冠ジョッキーの……いや、今年のダービージョッキーの勢いが止まらない。
19日、中京競馬場で行われたローズS(G2)は、福永祐一騎手の4番人気アンドヴァラナウト(牝3歳、栗東・池添学厩舎)が勝利。秋華賞(G1)で出走権確保が絶対条件だった2勝馬でしっかりと切符を手繰り寄せた。
「完璧な騎乗でした」
レース後、アンドヴァラナウトを管理する池添学調教師が最高の賛辞を送った通り、まさに理想的な競馬だった。
12番人気のエイシンヒテンが2着に逃げ粘り、2番人気のタガノパッション、3番人気クールキャットら後方勢の末脚が不発に終わった中、アンドヴァラナウトは「道中は一番良いポジションで脚を溜めることができていました」という福永騎手の言葉通り、好位6番手という絶妙のポジション。
「外に誘導したら非常に鋭く反応してくれて、とてもいい内容で勝ってくれたと思います」
完璧なレース運びで最後の直線を迎えたアンドヴァラナウトは、福永騎手のゴーサインに応えると末脚が爆発。逃げ粘ったエイシンヒテンを捕えると、1番人気アールドヴィーヴルの追い上げも完封して見せた。
「今回の冷静なレース運びも然ることながら、それ以上に讃えられるべきは福永騎手の育成力ではないでしょうか。
池添学調教師が『気が入りやすいタイプなのですが、毎回馬に(競馬を)教えてくれています』と絶賛していた通り、アンドヴァラナウトはデビューから6戦ずっと福永騎手が騎乗して育ててきた馬。
レース後には元騎手の安藤勝己さんも『乗り役の意のままに動けた分の勝利』とツイートされていましたが、逆に言えばアンドヴァラナウトが鞍上の意のままに動くまで教育されてきたということです。
今回、完璧なレースができたのは、たまたまアンドヴァラナウトが乗りやすい馬だったというわけではなく、乗りやすい馬に仕上げてきたことが福永騎手の総合力の高さを物語っていますね」(競馬記者)
これで小倉2歳S(G3)のスリーパーダ(2着)から始まり、紫苑S(G3)のファインルージュ(1着)、セントウルS(G2)のピクシーナイト(2着)、そしてローズSのアンドヴァラナウトと、福永騎手は重賞騎乗機会4戦連続連対と絶好調だ。
特に記者が話す通り、スプリンターズS(G1)の有力候補ピクシーナイトもまた、デビュー戦からずっと福永騎手が手綱を取り続け育ててきた逸材。
近年のビッグタイトルの獲得を見ても、三冠馬コントレイルやダービー馬シャフリヤールはもちろん、安田記念(G1)とマイルCS(G1)を勝ったインディチャンプも福永騎手が育ててきた馬という印象が強い。
「例えば、元JRA騎手の佐藤哲三さん、現役で言えば池添謙一騎手や松岡正海騎手など、1頭のお手馬にこだわって、しっかり育成していくジョッキーは、そこに力を注ぐ分、どうしても普段の勝ち星が実力通りについてこない印象です。
逆にC.ルメール騎手のように勝ち星を優先するジョッキーは、その時、その時の勝てる馬に乗ることが優先されますし、時には『強奪』と揶揄されることもしばしば……。必然的に1頭のお手馬にこだわって育成する機会は少なくなります。
しかし、今の福永騎手は育成と勝ち星を両立させている、まさに理想的な状況。これは騎手としての総合力の高さはもちろん、厩舎や外厩のスタッフとの高い連携力がない実現できないと思いますし、素晴らしいことだと思います」(別の記者)
重賞騎乗機会4戦連続連対などお手馬で結果を残していることはもちろん、夏の新潟リーディングや、12年連続の年間100勝達成など、勝ち星の量産にも成功している福永騎手。
「ずっと乗ってもらっているので、次(秋華賞)も乗ってほしい」と、アンドヴァラナウトの池添学調教師が懇願するのも当然だろう。秋競馬の主役の1人は、間違いなくこの男だ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。