NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』にオグリキャップが登場!武豊騎手や岡部幸雄騎手ら”レジェンド”が伝説的名馬の”流儀”を紐解く
現在の地方競馬には、中央で活躍できなかった馬の「受け皿」的な役割もあるが、当時はダート競馬そのものが現在よりも遥かに格下の位置づけであり、活躍できない馬は地方競馬ではなく、同じ中央競馬のダートで走るという選択肢しかなかった。
現在のような交流重賞は存在せず、中央で落ちぶれた馬が地方で走るケースもほぼない。唯一の接点は、年に一度だけ中央で開かれるオールカマーだけという中、中央競馬の馬は「中央競馬の世界」で生産され、地方競馬の馬は「地方競馬の世界」で生産されるといった状況だった。
オグリキャップもまた、そういった「地方競馬の世界」で生産されたサラブレッドの1頭だ。母ホワイトナルビーは笠松競馬で競走馬となり、4勝を上げて引退。そして、欧州の短距離で5勝を上げたが重賞勝ちすらない父ダンシングキャップもまた、中央競馬ではなく地方競馬で成功を収めている種牡馬だった。
つまり、オグリキャップはあくまで母が所属した「笠松競馬で活躍すること」を願って配合された馬である。
具体的に述べれば、母のオーナーでもあった小栗孝一氏ら関係者の狙いは、芝2500mの有馬記念を勝つ馬ではなく、スピードのあるダート向きの短距離馬であったということだ。実際にホワイトナルビーの6番仔だったオグリキャップよりも上の兄姉は、すべて地方競馬で競走馬となり、一度も中央で走ることのないまま引退している。
地方競馬には「地方競馬の世界」が今よりも遥かに色濃く存在し、地方馬として生まれた馬は地方馬として生涯を終えるのが当然の時代だった。
オグリキャップも例外ではなく、1つ”ボタンの掛け違い”があれば、おそらく「笠松競馬の雄」としてその生涯を終えていた可能性も充分にある。