JRAディープボンドにまさかの「ハプニング」!? 凱旋門賞制覇に黄色信号、C.デムーロ“強奪”に欧州ならではの鉄の掟
10月3日にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1)へ、ディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)とクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)が出走を予定。ディープボンドにはC.デムーロ騎手、クロノジェネシスにはO.マーフィー騎手がそれぞれ騎乗する見通しとなっている。
クロノジェネシスとマーフィー騎手が初コンビであるのに対し、ディープボンドとデムーロ騎手は凱旋門賞が2度目の騎乗であり、初騎乗で最高の結果を残したコンビに期待する声も多かった。
凱旋門賞の前哨戦である前走のフォワ賞(G2)で、逃げた経験がないディープボンドでハナを奪ってそのまま逃げ切り勝ち。「逃げたのは僕の作戦」と、話したデムーロ騎手のファインプレーだった。
デムーロ騎手は昨年ソットサスで凱旋門賞を優勝している騎手でもある。今年のフランスリーディングも6位につけているため、ディープボンド陣営にとっては頼もしい騎手を確保したはずだった。
ところが、本番まであと数日というところで陣営にとって予期せぬハプニングが発生する。現地時間29日に欧州メディア「Race Sharp」などが報じた情報によると、デムーロ騎手が凱旋門賞で急遽ラービアー(牝4歳、仏・J.ルジェ厩舎)に騎乗するというのだ。前哨戦を勝利して手応えを掴んでいたディープボンド陣営にとって、デムーロ騎手を失ったことは大きな誤算となったに違いない。
これにはデムーロ騎手がルジェ厩舎の管理馬へ優先的に騎乗する専属契約を結んでいることが関係している。今年の凱旋門賞ではルジェ厩舎の管理馬が出走するか未定だったが、今週に入って凱旋門賞とロワイヤリュー賞(G1)の両睨みだったラービアーが凱旋門賞出走を決めた。そのため、デムーロ騎手が契約を優先してラービアーへ騎乗する運びとなった。
契約上の問題でラービアーへ騎乗することになったデムーロ騎手だが、後ろ髪を引かれる想いだったのではないだろうか。デムーロ騎手は日刊スポーツ主催の実兄・M.デムーロ騎手との対談で「(フォワ賞を勝てて)うれしかったね。ずっと『日本の馬でビッグレースを勝ちたい』って思ってて初めて重賞を勝てた」と、話しており、大きなチャンスだった。
また、同対談では「日本が大好き。今年もコロナのせいで行けないけど、また短期免許で乗りに行きたいよ。今週は日本のためにも勝ちたい」と、ディープボンドに騎乗しての凱旋門賞連覇へ意欲を見せていた。
一方、欧州ならではの慣習で鞍上を変えざるを得なくなったディープボンドだが、後釜にM.バルザローナ騎手が入る方針だ。バルザローナ騎手は現時点でフランスリーディング2位のトップジョッキー。日本競馬関連では、今年のドバイターフ(G1)でヴァンドギャルドを2着に導いたこともある。
さらに、縁起の良い話もある。実は昨年デムーロ騎手へソットサスを薦めたのは、兄のミルコ騎手ということが先述の対談で明かされた。そして、今年ディープボンドを薦めたのもミルコ騎手だ。
今年もミルコ騎手の見立てが正しければ、鞍上変更という想定外のアクシデントがあったにせよ、ディープボンドの好走は期待できそうだ。新たな鞍上バルザローナ騎手を迎えて、1着で駆け抜けることを祈りたい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……