JRAジャパンC(G1)横山武史もガックリ「玉砕覚悟」の大捲り!? 武豊キタサンブラック再現のはずが、キセキ3度目の4コーナー先頭に大歓声
「(ハナに)行けるなら行こうと思っていました」
28日に東京競馬場で行われたジャパンC(G1)。すんなりとハナに立ったアリストテレスの鞍上・横山武史騎手は、内心「しめしめ……」と思っていたのではないだろうか。
これといった逃げ馬不在のメンバー構成は、戦前からスローペースが見込まれていたが、案の定1000m通過は62.2秒。これは過去5年間のジャパンCで最も遅いペースだ。
ちなみに2番目に遅い61.7秒だった2016年には、武豊騎手とキタサンブラックが堂々の逃げ切りを果たしているのだから、大ブレイク中の若手騎手もこの秋G1・3勝目の夢を見ていたに違いない。
しかし、そんな横山武騎手の思惑は、その後わずか数秒で脆くも崩れ去ってしまった。若手No.1騎手の計算を狂わせたのは、先頭からは最も遠い最後方にいたはずのキセキ(牡7歳、栗東・辻野泰之厩舎)だった。
「和田竜騎手に(癖を)把握してもらいたい」
課題のゲート難克服へ。陣営は戦前から、新たな鞍上となった和田竜二騎手を招いてゲート練習を重ねていた。「普通にゲートを出れば、逃げの選択肢もあり」とアーモンドアイの2着に好走した2018年の再現を狙っていたからだ。
しかし、そんな陣営の願いも空しく、スタートで遅れたキセキはあっという間に馬群に飲まれていった。1コーナーを回った時には18番手の最後方。古豪の3度目のジャパンC挑戦は、一瞬にして終わったかに見えた。
だが、「スタミナ勝負に持ち込みたくなかった」という和田竜騎手はここで諦めなかった。向正面に入り、ペースが遅いと見るや否や、後方から一気の進出を開始。凄まじい勢いで先頭に立つと、後続を大きく引き離して東京競馬場を沸かせた。
「レース後、アリストテレスの横山武騎手は『途中から捲られても大丈夫でした』と気丈に話していましたが、やはりキセキの奇襲は痛かったでしょうね。
あれでレースの流れは一変しましたし、2番手から最下位まで沈んだワグネリアンの失速ぶりを見ても、先行勢にとっては厳しい展開になりました。
ただ、キセキの和田竜騎手からすれば、スタートで出遅れてしまった中で、あれが最も可能性を感じさせる競馬だったと思います。4コーナーでは復活を期待するファンから大きな声援が上がっていましたし、これでジャパンCは3度目の4コーナー先頭。さすがに玉砕覚悟だったと思いますが、ある意味キセキらしい走りだったのではないでしょうか。少なくとも、見応えのあるレースになったことは間違いと思います」(競馬記者)
最後は失速して10着に敗れたものの、レース後「馬は良くなっていると感じた」と相棒の復活に手応えを隠さなかった和田竜騎手。
2017年の菊花賞から4年以上勝ち星から遠ざかっており、この秋には一時“引退報道”まで出回ったキセキだが、多くのファンが復活を待ち望んでいるはずだ。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。