JRA朝日杯FS(G1)ジオグリフ、コマンドラインに「共倒れ」疑惑が急浮上!? C.ルメールの使い分けだけじゃない違和感の正体
19日、阪神競馬場で行われる朝日杯FS(G1)は、今年も楽しみなメンバーが揃った。2歳戦ということもあって各馬のキャリアも浅く、まだ底を見せていない未来のG1馬が潜んでいる可能性もある。
その一方で、先週の阪神JF(G1)は、人気を集めた無敗馬のウォーターナビレラが3着、ナミュールが4着と敗れ、優勝したサークルオブライフ、2着ラブリイユアアイズはすでに敗戦を経験していた馬だった。
こういった結果を考えると、上位人気が予想される出走予定馬に無敗馬の多い今週もまた、全幅の信頼を置くには心許ないかもしれない。セリフォスやダノンスコーピオンは、それぞれ前走から別の騎手へと乗り替わり。ドウデュースにしても武豊騎手が、未勝利に苦しんでいるG1の朝日杯FSである。
そして不安を抱えているのは、騎手リーディングを独走するC.ルメール騎手がコンビを組むジオグリフ(牡2、美浦・木村哲也厩舎)とて例外ではない。
6月東京にデビュー勝ちした同馬は、2戦目となった9月の札幌2歳S(G3)を、2着アスクワイルドモアに4馬身の差をつけて圧勝。最後の直線半ばでは、あまりの手応えの良さにルメール騎手が左右を振り返るほどの楽勝だった。
ただ、ジオグリフを所有するサンデーレーシングは、比較的早い段階から同馬のノド鳴りを公表しており、いつ表面化するかわからない爆弾を抱えていることも確かだ。
加えて来春のクラシックを意識できる中距離の芝1800mを連勝しながら、このタイミングであえて距離短縮となるマイルG1に使ってきたことには、少々疑問が残る。
2000mのG1・ホープフルSからは、サートゥルナーリアやコントレイルなどのクラシック勝ち馬が出ているものの、朝日杯FS組は早熟タイプが多い傾向がある。近年の優勝馬で複数のG1勝利を手にしたのは、ロゴタイプ、アドマイヤマーズなどのマイラーだった。
となると、朝日杯に出走すること自体が、大きな分岐点の一つとなっており、ジオグリフがたとえ優勝したとしても、クラシックには無縁で終わる未来も十分にありそうだ。
この選択肢と切っても切れない関係にあるのが、主戦を任されているルメール騎手の存在である。
なぜならデビュー前の追い切りに騎乗したルメール騎手が、「あまりの乗り味の良さにダービーも予約をしておきます」と話したほど惚れ込んでいるコマンドラインという超大物が控えているからだ。
コマンドラインも戦前の期待に応え、6月東京のデビュー戦から10月のサウジアラビアRC(G3)を連勝。2戦無敗で重賞勝ちと結果を出したことは評価できる。
ただ、2戦とも楽勝したジオグリフのパフォーマンスに比べ、コマンドラインの連勝の中身には大きな疑問が残る。玉石混交の新馬戦こそ3馬身差で勝利したとはいえ、勝ちタイムは1分35秒4と平凡。先述のサウジアラビアRCで1/2馬身で2着ステルナティーアは、先週の阪神JF(G1)で2番人気の支持を集めながら、7着と凡走している。
「実際に背中を知っているルメール騎手の発言だけに信憑性はありますが、コマンドラインにそこまでの強さを感じませんでした。ステルナティーアが勝ち負けしていれば、この馬を物差しに強さの裏付けとなったのですが、ご覧の有様でしたし……。
さらに致命的なマイナスとなりそうなのが、中距離しか使われていないジオグリフがマイル、逆にマイルしか使われていないコマンドラインが、中距離のホープフルSに使い分けられることです」(競馬記者)
いわれてみれば、それぞれの兄姉の成績でもコマンドラインはマイル寄り、ジオグリフは中距離寄りで好走をしている。ならば、本来の血統的な背景だと、2頭の路線はむしろ逆ということにもなりかねない。
ジオグリフの父ドレフォンの産駒は芝ダート問わず、最も勝率が高い1800mの22.0%に対し、1600mは半分以下の9.5%と大幅に下がる。ただでさえ、クラシックで苦戦する朝日杯にジオグリフが出走し、マイル向きのコマンドラインがホープフルSという真逆の選択がされたともいえる。
最悪の場合、どちらも共倒れとなる可能性も出てくるのではないだろうか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。