JRA「重賞94連敗」岩田望来に救いの女神降臨!? きさらぎ賞(G3)「紅一点」だからと侮ってはいけない良血馬とは
先週末に行われた根岸S(G3)は、岩田康誠騎手のテイエムサウスダンが中団から差し切って優勝。5歳にして初のJRA重賞制覇となったが、鞍上は「悲願ではない。これからの馬なので」とコメント。今後もダート短距離界で目が離せない1頭になりそうだ。
一方、息子の岩田望来騎手が騎乗したスリーグランドは、8番人気で8着。人気通りの着順だが、レースは好位追走から直線そのまま流れ込むようなかたちに終わった。馬の力が足りなかった部分もあるだろうが、勝利を掴むには何かもうひと工夫あっても良かったかもしれない。近頃取り沙汰されている重賞連敗記録は、これで「94」に伸びてしまった。
そんな岩田望騎手だが、今週末に中京で開催されるきさらぎ賞(G3)では、紅一点のセルケト(牝3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)で挑むことが予定されている。
同馬は、半兄に2019年の皐月賞(G1)でアタマ差の2着に入ったヴェロックスを持つ良血馬だ。昨年11月の阪神芝1600mのデビュー戦は、1番人気に支持されるも3着。だが、騎乗した福永祐一騎手はレース後、「距離はもう少しあっていいと思う。素質を感じる馬」と、好感触だった。
その言葉通り、2ハロン距離を延長して臨んだのが前走の中京芝2000mの未勝利戦だ。道中は2番手を追走すると、逃げ切り態勢に入ったヘクトパスカルを直線残り100mで力強く捉え、2戦目で待望の初白星を飾った。
今回はいきなりの重賞挑戦になるが、陣営は『日刊スポーツ』の取材に対し「調教だけ見たら、もっと上でもやれそう。カイ食いも男馬と遜色ない」と、回答。その証拠に、1週前追い切りでは栗東のウッドコースで僚馬に先着する上々の内容だった。
とはいえ、やはり牡馬を相手に好走するのは厳しいと思われているようだ。『netkeiba.com』の想定オッズでは、登録13頭のうちの9番人気と下位評価に甘んじている。
だが、同馬の持ち時計を見れば、上位予想の馬たちとはそれほど実力差が無いようにも見える。
セルケトが前走で記録した2分00秒8は、きさらぎ賞の1番人気を想定されるダンテスヴューが、昨年10月に同コースの未勝利戦で記録した2分00秒9を0秒1上回っていた。さらに、リューベックが勝った先月の若駒S(L)の勝ちタイムよりも1秒4も速かった。
きさらぎ賞の登録馬の中で唯一の2勝馬であり、上位人気が予想されるリューベックは、現時点で出否が未確定である。仮に回避すれば、出走全頭が1勝馬の混戦模様となる。そうなれば、牝馬であるセルケトにも一発のチャンスが生まれてくるかもしれない。
「ちなみに15年のきさらぎ賞は牝馬のルージュバックが制しましたが、このときは出走した牡馬の6頭中5頭が1勝馬でした。今年も似たようなメンバー構成になることが予想されるため、セルケトも牝馬ではあるものの決してノーチャンスではないと思います」(競馬誌ライター)
なおセルケトの馬名の由来は、古代エジプト神話に登場する女神の名前で、呼吸させる者の意だそうだ。言い伝えでは、砂漠の住民たちをサソリの毒や有害な生き物たちの恐怖から救済したという。同馬が岩田望騎手を重賞連敗から救う女神になれるか注目しておきたい。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。