JRAクイーンC(G3)「仕上がり八分」のデビュー戦勝利した上積みに期待、「二強ムード」を打ち破るのは“香港の英雄”の血を継ぐ馬!?
12日、東京競馬場で開催されるクイーンC(G3)は、春の牝馬クラシック戦線を見据えた重要なステップレースの1つだ。
過去の勝ち馬にはメジャーエンブレム、クロノジェネシス、アカイトリノムスメと後にG1を勝利する面々が名を連ねている。出世レースとしての意味合いも強いだろう。
最後の直線が長く、末脚を存分に発揮しやすい東京芝1600mという条件や、桜花賞(G1)の約2ヶ月前という施行時期も、各陣営にとって使いやすく、毎年多くの登録馬で溢れるのも納得だ。今年は特別登録の時点で、フルゲート16頭に18頭がエントリーしている。
そんな登竜門的な舞台で、賞金上位により出走を確定させているのが、スターズオンアースとベルクレスタの2頭だ。
スターズオンアースは、同舞台で行われた2走前の赤松賞(1勝クラス)で3着に敗れたが、次戦のフェアリーS(G3)で狭いスペースをこじ開けて2着。昨年から波に乗っている横山武史騎手に替わり、2勝目を掴めるか注目だ。
対するベルクレスタは同コースのアルテミスS(G3)で、後の阪神JF(G1)優勝馬サークルオブライフに肉薄する2着と善戦した。その阪神JFでは6着に敗れてしまったが、得意コースでの巻き返しが期待されている1頭だ。
それもあって『netkeiba.com』の単勝予想オッズでも2頭に人気が集中。共に単勝2倍台となっており、「一騎打ち」ムードが漂う。
ただ、二強でそのまま決まっては、配当的な楽しみがない。
そこで一角崩しとして期待するのが、松岡正海騎手のウインエクレール(牝3歳、美浦・畠山吉宏厩舎)だ。
本馬は先月新馬戦を勝ったばかり。キャリアの浅さが気になるところだが、1戦しか走っていないがゆえの大きな伸びしろが見込める馬でもある。
その新馬戦はクビ差の辛勝だったが、松岡騎手曰く「仕上がり八分。まだ体に余裕があって10キロほど太い」という状態だった。また当時の2着馬は、先日の降着騒動で話題となった5日の中京5Rに出走し、不利を受けて2着になったバンデルオーラだ。新馬戦のレースレベルも低くないため、仕上がっていない状態で勝てたのは、高い能力を持っているからだろう。
加えて、本馬が香港のG1を2勝した「香港の英雄」ウインブライトの半妹である点も見逃せない。兄の主戦も務めた松岡騎手は『スポーツニッポン』の取材に「(ウインブライトと比較して)完成するのはこの馬の方が早いと思う。持っている素質は間違いない」と、回答。もしかしたら兄以上のポテンシャルを有しているかもしれない。
「レースセンスの高さはどこかウインブライトを感じさせますね。ジョッキーは『牝馬なので全くタイプが違う』と、話しているそうですが……。
ただ、逆にその点が今回働くかもしれません。現役時代のウインブライトは中山コースを得意としていましたが、東京コースは未勝利戦の1勝のみと実績に乏しいです。タイプが違うのであれば、ウインエクレールは東京向きということも。中山の新馬戦こそ勝ちましたが、追って味のある点を踏まえると東京向きとも見てとれます。
また、血統面でも東京替わりが期待できます。産駒が中山巧者になる傾向の強いステイゴールドを父にもつ兄に対して、こちらはディープインパクト産駒。同産駒は中山より東京向きの馬が多い印象です。舞台が替わって更なる前進があるかもしれません」(競馬記者)
畠山師が「何とか桜花賞路線に乗せたい」と、話す好素材。果たして、今回賞金を加算して桜花賞へ乗り込めるか。注目したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……