JRAオーナーの指示「ガン無視」が生んだ最低人気の衝撃V! フェブラリーS(G1)人気薄だからこそ怖い「重の鬼」

 競馬は時として、誰もが予期せぬ大波乱が起きる。

 先週の12日、東京競馬場で行われた最終12Rでは、16頭立ての最低16番人気ヤマメが勝利し、単勝馬券としてはJRA史上3番目となる「549.4倍」の超高額配当が飛び出した。さらに、上位人気勢も総崩れしたことにより、3連単は「1400万」を超える大波乱の結末となった。

 このような単勝万馬券の馬が勝利するシーンは滅多にお目にかかれないが、今週末の20日に行われるフェブラリーS(G1)においても、過去に一度だけ単勝万馬券で高額配当を演出した馬がいる。それが14年の同レースを制したコパノリッキーだ。

 錚々たるメンバーが揃うなか、前走はオープンクラスで9着に凡走していたこともあって、最終的な人気は16頭立ての最低16番人気。さらに、鞍上は当時まだG1未勝利だった田辺裕信騎手が初騎乗という事も重なって、単勝「272.1倍」の超大穴扱いだった。

 戦前の予想では、前年のジャパンCダート(G1・現チャンピオンズC)を制したベルシャザールと、東京大賞典(G1)と川崎記念(G1)を連勝したホッコータルマエの2強対決の一騎打ちムードが漂うなか、ゲートが開く。

田辺裕信騎手

「オーナーには“ホッコータルマエをマークしろ”と言われたんですが、そこは無視しました」

 コパノリッキーのオーナーであるDr.コパこと小林祥晃氏から事前に指示を受けていた田辺騎手だが、スタートが切られると2頭外にいたホッコータルマエには目もくれず、内から逃げたエーシントップをすぐに追いかけた。前半3ハロン35秒5のミドルペースを、道中2番手でレースを進めて最後の直線を迎える。

 抜群の手応えであっさり先頭に立つと、残り400m付近で鞍上がようやく追い出しを開始。すぐ後ろから人気のホッコータルマエが懸命に追いかけるも、なかなか前との差が縮まらない。遅れてベルシャザールが外から猛追してきたが、そのままゴールまで二頭の追撃を振り切り、シンガリ人気ながら堂々たる完勝をおさめた。

 誰もが予想しなかった結末に、東京競馬場は一瞬静まり返り、異様な雰囲気に包まれた。奇しくも田辺騎手はこれがG1初制覇。オーナーの指示とはかけ離れたレース運びだったが、結果的に鞍上の好判断が実った大金星となった。

 あれから8年が経った今年のフェブラリーSでは、昨年同様アルクトス(牡7、美浦・栗田徹厩舎)とのコンビで出走を予定している。昨年は2番人気に支持された実力馬だが、現在『netkeiba.com』の単勝予想オッズでは、9番人気となっており、今年は打って変わって気楽な立場だ。

 同馬は、昨年の同レースで9着に敗れて以降、間隔をあけながら使われており、さきたま杯(G2)と南部杯(G1)を連勝中だ。昨年の臨戦過程とは異なり、しっかりと休養を取りながら調整を進めてきている。

 週末の東京は雨予報となっており、重・不良馬場では必ず連対しているこの馬にとっては追い風だろう。先週の共同通信杯(G3)では、2番人気のアサヒに騎乗し、結果を残せなかった田辺騎手。今週はアッと驚く激走を見せてくれることを期待したい。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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