チューリップ賞(G2)「鬼門の克服」は国枝栄師の秘策次第!? 元JRA安藤勝己氏“絶賛”サークルオブライフに浮かび上がった「難題」とは
5日、阪神競馬場では桜花賞(G1)への登竜門、チューリップ賞(G2)が行われる。
主役を担うのは昨年の阪神JF(G1)を制し、2歳女王に輝いたサークルオブライフ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)だろう。
前走の阪神JFは、中団やや後方で脚を溜めると、外を通って徐々に進出。直線で鞍上のM.デムーロ騎手がムチを振るうとゴール前でグイっとひと伸びし、うれしいG1初制覇を飾った。
元JRA安藤勝己氏が「力負けやない」と評した大器も巻き返し必至
その前走でサークルオブライフに自信の「◎」を打っていた元JRA騎手の安藤勝己氏は、本命馬の勝利を見届けると、Twitterを更新。「大外の進路に躊躇なかった」と、迷いなく大外に持ち出したデムーロ騎手の判断を褒め、それに応えたサークルオブライフの末脚を「そしたらもう決め手が違うもんな」絶賛した。
前走後は放牧先で約1か月間にわたって充電。1月中旬に美浦に帰厩すると、ウッドチップコースを中心にじっくり乗り込まれてきた。最終追い切りには、美浦に駆け付けたデムーロ騎手を背に併せ馬を消化。僚馬を4馬身追走し、最後は併入に持ち込んだ。
「調子は良さそう。いい結果を出したいね」と振り返ったデムーロ騎手のコメントからも、2歳女王として負けられない一戦と見てよさそうだ。
■2歳女王に浮かび上がる難題とは
ところが、サークルオブライフにはある難題が待ち構えている。それがチューリップ賞から桜花賞という一見王道にも映るローテーションで、これが関東馬には鬼門となっている。
1994年に第1回が開催されて以降、チューリップ賞を制した関東馬は4頭いる(2012年ハナズゴール、15年ココロノアイ、17年ソウルスターリング、20年マルターズディオサ)。このうちハナズゴールを除く3頭は桜花賞に出走したが、いずれも敗退。特にソウルスターリングが単勝1.4倍の断然人気を裏切り3着に敗れたのは記憶に新しい。
一方で、チューリップ賞を使われ、桜花賞馬に輝いた関東馬もいる。10年アパパネと13年アユサンの2頭だ。ただし、両馬ともチューリップ賞では勝ち馬の後塵を拝している。つまり、関東馬は両レースを連勝したことが一度もないということになる。
「チューリップ賞から桜花賞は約1か月の間隔が空きますが、関東馬は2度の長距離輸送が必要となります。繊細な3歳牝馬にはやや酷といえるかもしれません。ただし、このローテーションで桜花賞を制した関東馬2頭にはある共通点がありました」(競馬記者)
記者が話してくれた2頭の共通点というのが、実は「栗東滞在」である。
サークルオブライフと同じ国枝厩舎に所属していたアパパネは、チューリップ賞前から栗東に滞在し、関西の水に慣れていた。さらにチューリップ賞の後もそのまま栗東に滞在し、長距離輸送を挟むことなく、桜花賞で大輪の花を咲かせた。
手塚貴久調教師が手掛けたアユサンもまた、チューリップ賞後は栗東に滞在し、長距離輸送を回避。本番では7番人気という低評価を覆して下克上を成し遂げた。
注目のサークルオブライフだが、国枝師は『東京スポーツ』の取材に「予定ではあるけど、チューリップ賞の後にはそのまま栗東に滞在させることも考えている」と、桜花賞までの1か月間を栗東で過ごす可能性にも言及している。
アパパネとアーモンドアイで2度の牝馬三冠を達成した百戦錬磨の名伯楽。サークルオブライフには“アパパネコース”を歩ませるのか、それとも2度の長距離輸送を課すのか。その判断にも注目したい。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。