JRAチューリップ賞(G2)単勝229.8倍ピンハイ激走は「地獄の10馬身出遅れ」のおかげ!? 1番人気ナミュール勝利も25万馬券…約30分前にあった顔面蒼白の出来事
5日に阪神競馬場で行われたチューリップ賞(G2)は、1番人気のナミュールが順当に勝利。昨年の阪神ジュベナイルF(G1)でも1番人気に推さた大器が、ついにその能力を見せつけた。
3着にも阪神JFを制した2歳女王サークルオブライフが入線する順当な結果。それでも三連単が25万8360円と大荒れの結果になったのは、2着に13番人気ピンハイ(牝3歳、栗東・田中克典厩舎)が激走したからだ。
15頭立て芝1600mのレースで、1枠1番から出遅れるという厳しいスタートとなったピンハイ。しかし、鞍上の高倉稜騎手が即座に立て直しを図ると、道中は勝ったナミュールの後ろという絶妙なポジションを確保している。
3、4コーナーで内枠を活かしてロスなく回ると、最後の直線入り口で最内から馬群を捌いてスルスルと浮上。先頭集団に並び掛けると、最後まで粘り切って貴重な桜花賞(G1)切符を手にした。
単勝229.8倍の超大穴の激走とあってレース後、Twitterのトレンドでは「ピンハイ」が急浮上。あっという間にトレンド1位になると「これはお見事!」「1枠1番をフルに生かした好騎乗」「どうやっても買えませんでした」「ジョッキーと手が合ってる」など、高倉騎手の騎乗を称賛する声が続々……。
中でも特に目立ったのが「あの出遅れから来るとは」「リカバリーが完璧でした」といった出遅れを跳ね返す好騎乗を称える声だった
■直前10Rにあった「大出遅れ」で冷静に対応?
「苦しいスタートになりましたが、見事なリカバリーでしたね。実は高倉騎手はチューリップ賞の直前の(阪神10R)橿原Sにも騎乗していましたが、『致命的』と言わざるを得ない非常に大きな出遅れとなってしまいました。それもピンハイと同じ1枠1番……チューリップ賞のピンハイもやや出遅れましたが、冷静に対応できていたのは“アレ”があったからかもしれません(笑)」(競馬記者)
チューリップ賞では、5番人気のルージュスティリアの大きな出遅れが話題になったが、記者曰く「あれ以上に致命的」だったという。
確かにVTRを振り返ると、スタート直後に高倉騎手のサイモンハロルド1頭だけ「ゲートが開かなったのでは……」と疑ってしまうほどの大出遅れ。約10馬身以上の出遅れで早々に画面から消えてしまい、高倉騎手も頭が真っ白になったのではないだろうか。
「まあ、それ(10Rの出遅れ)は冗談として、レース後に本人が『出脚はこんなもの』と話していた通り、デビュー戦から手綱を取って、ピンハイのスタートのマズさ知っていたことが大きかったのではないでしょうか。
デビュー戦も出遅れた上に、決してスムーズとは言えない競馬でしたが、インから上がっていって最後は狭いところを割って抜け出しています。
当時、田中克調教師が『勝負根性がある』と褒めていましたが、この日は高倉騎手も『勝負根性があることを頭に入れて、外を回るよりも内のスペースを狙った』と話していた通り、まさに陣営の作戦通りのレースでしょう。本番でも混戦になれば楽しみが大きくなる馬です」(同)
「強い相手に先着できましたし、評価できると思います」
レース後、ピンハイと共に桜花賞の優先出走権を掴んだ高倉騎手は、これが昨年のチャンピオンズC(G1)以来となる、15度目のG1挑戦になりそうだ。阪神競馬場といえば、ノーブルマーズとコンビを組んだ2018年の宝塚記念(G1)で、自身キャリアハイの3着に好走した舞台。当時も12番人気の人気薄と、波乱の立役者となった。
ナミュールという明確な「主役」が出現した今年の桜花賞戦線。だが、過去には一昨年のシゲルピンクダイヤなど、チューリップ賞で惜敗した馬が本番で波乱を起こしたケースはいくつもある。逆転のG1初制覇へ、さらなる混戦がピンハイと高倉騎手を待っているはずだ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。