JRA【高松宮記念(G1)展望】横山武史×レシステンシアVS池添謙一×メイケイエール! 牝馬2強の「一騎打ち」に割って入るのは「新・代打の神様」福永祐一!?
いよいよ春のG1シリーズが開幕する。27日、中京競馬場で行われるのは春のスプリント王を決める高松宮記念(G1)だ。
昨年の覇者ダノンスマッシュは、すでに現役を引退。昨秋のスプリンターズS(G1)を制したピクシーナイトは骨折で長期休養中となれば、主役はこの馬しかいないだろう。
昨年の春秋スプリントG1で共に2着に好走したレシステンシア(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)である。
19年阪神JF(G1)を2歳コースレコードで制したレシステンシアだったが、それ以降G1では惜敗続きのまま2年以上が経過した。3歳春には桜花賞(G1)とNHKマイルC(G1)で連続2着。昨年は春秋スプリントG1に加え、前走・香港スプリント(G1)でも2着と、すさまじい“シルバーコレクター”ぶりを見せている。
2年連続の1番人気が予想される今回は、鞍上に初コンビの横山武史騎手を迎える。栗東坂路で行われた1週前追い切りで初コンタクトを取ると、50秒1-11秒7の好時計をマーク。『サンスポ』の取材に対し、「想像していた以上に大きくて、その体をダイナミックに使う馬だなと思った。癖もないし感触はいい。スピードは一級品」と、その素質を高く評価している。
昨年はG1・5勝を含めて重賞を9勝した横山武騎手だが、今年はまだチューリップ賞(G2)の1勝だけ。この春は大阪杯エフフォーリア、桜花賞ナミュール、皐月賞キラーアビリティと、人気馬でのG1ロードが続く。勢いをつけるためにも、まずはオープニングで勝利を飾りたいところだ。23歳の若武者は、レシステンシアに2年3か月ぶりとなるG1の美酒をもたらすことはできるか。
そんなレシステンシアが最も警戒すべき相手は、メイケイエール(牝4歳、栗東・武英智厩舎)だろう。
普段の調教などでは従順な優等生といわれるが、レースになると気性の難しさを露呈。騎手の制御を振り払うようなことを繰り返してきた。
特に顕著だったのは昨年の桜花賞。代打騎乗を務めた大ベテランの横山典弘騎手をもってしても、まったく制御が効かず。道中で他馬に“大迷惑”をかける事態に。早め先頭に立ってからは落ち着きを取り戻したが、直線で失速。しんがり負けに終わった。
その後はスプリント路線に狙いを定めたが、初戦のキーンランドC(G3)では1番人気を裏切り7着。スプリンターズSでは7番人気まで評価を下げていた。
主戦を務めていた武豊騎手もお手上げ状態のなか、新たに鞍上に迎え入れられたのが「代打の神様」の異名を持つ池添謙一騎手だった。
初コンビの一戦は、折り合いに苦労はしたものの、なんとか中団で我慢。先行有利な流れの中、直線で脚を伸ばして4着に食い込んだ。レース後、池添騎手は「力はあります。いかにリラックスして運べるかですね」「次に繋がる走りだった」と手応えを口にしていた。
そして2度目の騎乗となった前走シルクロードS(G3)は、好スタートから課題の折り合いをクリアし、好位を追走。直線早めに抜け出すと、後続の追撃をしのぎきり、11か月ぶりの勝利をつかんだ。
その後はノーザンファームしがらきでリフレッシュ放牧を経て、先月下旬に栗東へ帰厩。1週前追い切りは、池添騎手を背に栗東CWで4ハロン51秒5-11秒6を馬なりでマークした。「落ち着いていましたし、動きもよかった。悪くない雰囲気です」という池添騎手の言葉通りなら、悲願のG1初制覇も夢ではない。前走で本番と同じコースで勝てたことは大きなアドバンテージにもなるだろう。試行錯誤してきた陣営の努力が大舞台でついに結実するか。
牝馬2頭の間に割って入るのは、怪物フランケル産駒のグレナディアガーズ(牡4歳、栗東・中内田充正厩舎)だ。
20年暮れに人気薄で朝日杯FS(G1)を制したが、それ以降は長らく勝利に見放されていた。ファルコンS(G3)、NHKマイルC、京成杯AH(G3)はいずれも1番人気に推されるも、3戦連続で惜敗。秋の大一番、マイルCS(G1)では「道中で壁をつくれず、だいぶ力んで走っていました」という当時鞍上の池添騎手のコメント通り、消化不良の競馬で、初めて掲示板を外す13着に大敗した。
ところが、再び距離を短縮して臨んだ前走の阪神C(G2)で復活の勝利を挙げることになる。
C.デムーロ騎手に乗り替わっての一戦は、スタートで後手を踏み、道中は中団やや後方を追走。直線外に持ち出すと、惜敗続きの鬱憤を晴らすかのような末脚で突き抜けた。
それ以来、3か月ぶりの実戦で鞍上を務めるのはテン乗りの福永祐一騎手だ。2週前に続き、1週前追い切りにも跨り感触を確かめると「動きはさすがですね。非常にレベルが高い」と、本番に向けて良化気配を感じ取った様子だ。
先月には同じくテン乗りだったカフェファラオに騎乗し、見事フェブラリーS(G1)連覇に導いた福永騎手。今回も代打起用に応えることができれば「新・代打の神様」を襲名することになるかもしれない。
前哨戦の阪急杯(G3)でクビ差の勝負を演じた2頭にもチャンスがある。
前走で1年8か月ぶりの勝利を飾ったダイアトニック(牡7歳、栗東・安田隆行厩舎)は、ベテラン岩田康誠騎手とのコンビで2年前の雪辱を期す。
悔しい思いをしたのは、4番人気で臨んだ2年前の高松宮記念。直線抜け出そうとしたところで、前を行くクリノガウディーが斜行し、大きな不利を受け3着(4位入線)に敗れた。もしスムーズなら際どい争いになっていただろう。
その後は順当に函館スプリントS(G3)を制し、スプリント界を背負っていくかに見えたが、骨折による休養を挟んで3戦連続2桁着順と低迷。ようやく復活の兆しを見せたのは2走前の京都金杯(G3)だった。ここで4着に入ると、前走は岩田康騎手が十八番のイン突きを披露し、1年8か月ぶりの勝利を飾った。
酸いも甘いもかみ分けてきた人馬がここで大仕事をやってのけるか。
阪急杯でダイアトニックに迫ったトゥラヴェスーラ(牡7歳、栗東・高橋康之厩舎)。その前走は9か月ぶりの実戦で、馬体重は「+22kg」といかにも叩きという一戦だった。9番人気と評価は低かったが、直線ではそれを覆す鋭い伸び脚を見せた。
昨年は16番人気ながら、見せ場たっぷりの4着に入った舞台。休み明け2戦目で、それを上回るパフォーマンスを披露する可能性は十分ありそうだ。
3歳時に皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)でコントレイル相手に好勝負を演じたサリオス(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)が生粋のスプリンターたちに挑戦状を叩きつける。
3歳秋以降はマイル路線を歩んできたが、思ったような結果を残せず。今回は一気に2ハロン短縮しての一戦となるが、陣営のテンションは上昇中だ。
管理する堀師は2週前追い切り後に「全体的に身のこなしが重く、息遣いも悪くて、仕上がりは遅れています」と、かなり不満げなコメントを残していた。ところが、1週前追い切りを見届けると「終始手応えが良く、フルスピードに入りました。しっかりやったことで心肺機能は向上するでしょう」と、トーンが一変。初のスプリント戦で大きな変わり身を見せられるか。
鞍上は、デビュー2戦目のサウジアラビアRC(G3)以来となる石橋脩騎手に決定。急遽巡ってきたこのチャンスをものにしたい。
この他には、母がスプリントG1(02年スプリンターズS、03年高松宮記念)を2勝した名牝ビリーヴというジャンダルム(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎)、キャリア28戦中14戦で上がり最速をマークしているナランフレグ(牡6歳、美浦・宗像義忠厩舎)、前走の京都牝馬S(G3)を斤量56kgで快勝したロータスランド(牝5歳、栗東・辻野泰之厩舎)など伏兵陣も多彩だ。
注目される春のG1シリーズ開幕戦は、27日15時40分の発走を予定している。