JRA武豊ドウデュースに期待膨らむも見えてきた「勢力図」…イクイノックス、ダノンベルーガら皐月賞(G1)「5強」が抱える武器と不安材料

ドウデュース 撮影:Ruriko.I

 19日の若葉S(L)をデシエルト、20日のスプリングS(G2)をビーアストニッシドがそれぞれ勝利した先週末で皐月賞トライアルも終了。26日の毎日杯(G3)を残しているとはいえ、皐月賞(G1)の勢力図もかなりはっきりと見え始めてきた。

 今年のクラシック一冠目の大きな特徴といえるのは、トライアルを使って本番に挑む組と、前走から間隔を開けて直行する組に有力馬が分散したことである。直接対決をしたことのない組み合わせも多数あり、横の力関係が分かりにくいことも、難解な理由となっている。

 今回は、そんな3歳牡馬の中から有力馬5頭をピックアップしたが、先にトライアルで優先出走権を獲得した馬から見てみたい。

 現状で他馬を一歩リードしているのは、やはり武豊騎手とのコンビで大きな注目を集めるドウデュースだろう。朝日杯フューチュリティS(G1)ですでにG1タイトルも獲得しており、トップクラスの能力であることは間違いない。

 前走の弥生賞ディープインパクト記念(G2)で2着に敗れたものの、武豊騎手も「許容範囲内でしょう。距離延長も問題なかった」と前向きなコメントを残している。勝負どころでスムーズさを欠く“展開のアヤ”といえる内容に「トライアルとしては良かった」と評したのも納得だ。

 むしろ本番前に中山コースを経験できたこともプラスに働きそうである。本馬の場合、気になるとしたら直行する未対決組との力関係だろうか。

 スプリングS組は、3着までに入った全馬がそれまでの重賞で底を見せていたため、未知の魅力がある訳でもなく、ここでは採り上げない。

 若葉S組は、初芝でいきなり3馬身差の圧勝を演じたデシエルトが不気味。主戦の岩田康誠騎手がインタビュアーに「勝つために来た」と強気な発言をしたことでも話題となった。母系にエアグルーヴ、近親のドゥラメンテがいる血統はいかにもクラシック向き。

 主戦のコメントからもスプリングSを制したビーアストニッシドよりも、熱の入り具合が違うようにも感じられる一方、一線級とまだ戦ったことはない。主戦曰く「この馬のペース」ということだが、デビューからの3戦はほぼ逃げて勝利。道中で折り合いに苦心していたようにも映り、一気に相手が強くなる本番でマイペースの競馬が出来るかどうかは不安だ。

 次に、前走から直行する組はどうか。

 

イクイノックス 競馬つらつらより

 最有力と見られているのは、昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)を圧勝したイクイノックスだろう。スローで流れた展開を後方から上がり3ハロン32秒9の鬼脚で2着アサヒに2馬身半の完勝。1分46秒2(良馬場)の勝ち時計も優秀であり、G1級と評する声も出た逸材である。

 好位から抜け出す競馬で活躍した父キタサンブラックのイメージと異なり、こちらは鋭い末脚が武器。昨夏のデビュー戦で7馬身突き放したサークルオブライフが阪神JF(G1)を優勝したように、ポテンシャルの高さは群を抜いている。

 懸念されるのは、東京スポーツ杯2歳Sから皐月賞に直行という異例のローテーションだ。新潟、東京の2戦をいずれも楽勝したとはいえ、いずれも大箱の左回りコースだった。

 また、中山や右回りの未経験、わずか2戦のキャリアもさすがに心許ない。2歳戦がスタートした1946年以降、2戦のキャリアで皐月賞を制した馬はいない。勝てば勿論、同レース史上最少キャリアでの勝利となるが……。

キラーアビリティ

 次に注目したいのは、昨年のホープフルS(G1)を制したキラーアビリティだ。最大の強調材料は、中山芝2000mという本番と同じ舞台でG1を勝利したこと。ホープフルSからの直行はやや不安も、同じローテーションのコントレイル、サートゥルナーリアが優勝した。

 近年のトレンドとして注目されている使われ方でもあり、休み明けの仕上げに定評のあるノーザンファーム生産馬なら大きな問題とはならなさそう。

 ただ、他馬に比べてこちらはデビュー戦をレッドベルアームの5着、萩S(L)を2着に敗れているのは割引材料。萩Sの勝ち馬ダノンスコーピオンが、朝日杯FSでドウデュースに後れを取ったことも、ホープフルSのレースレベルに疑問符がつく。

 最後の1頭は、共同通信杯(G3)で強い勝ち方をしたダノンベルーガだ。新馬勝ちしたばかりの馬が、ジオグリフやビーアストニッシド相手にあっさりと勝利。出走してくれば、上位人気必至だろう。

 ただ、体質の弱さから陣営は、皐月賞出走をまだ明言していない。さらにデビュー戦を石橋脩騎手、共同通信杯を松山弘平騎手が騎乗して、次走は川田将雅騎手とのコンビが発表。乗り替わる相手としては申し分ないものの、G1でテン乗りは歓迎できない。

 イクイノックス同様、この馬もキャリア2戦で左回りのみの経験。底知れない魅力を備えているが危うさもある。

 ここまでドウドゥース、デシエルト、イクイノックス、キラーアビリティ、ダノンベルーガの5頭を採り上げてみたが、最も減点が少ないという意味ではドウデュースがライバルをリードしているという結論に落ち着きそう。

 しかし、無敗馬が3頭いることはドウデュースにとって脅威。底を見せていない魅力を考えると、勝ち馬はこちらに潜んでいる可能性が高いかもしれない。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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