JRA大阪杯(G1)ジャックドール登場も「価値急落」に興醒め!? エフフォーリアもシャフリヤールに完敗、見たかった対決は実現せずとも「妙味十分」の遠征
先週の高松宮記念を皮切りに今週は大阪杯が開催。桜花賞、皐月賞と続いていく「春のG1祭り」は盛り上がりを見せている。
大阪杯でエフフォーリア1強ムードに待ったをかける存在として、ジャックドールという新星が登場したものの、今年最初の中距離G1としては物足りなさもある。アカイイトやレイパパレにマカヒキなどのG1馬も出走を予定しているが、エフフォーリアの牙城を崩せるまでの期待感はない。
どうしても興醒めしてしまう理由として、日本馬が大活躍した先日の「ドバイワールドカップデー」が大きく関係しているだろう。
金鯱賞(G2)を圧勝したジャックドールが魅力的な馬であることに間違いはないが、同じ芝の中距離でトップクラスといえるパンサラッサ、シャフリヤールもまた、エフフォーリアにとって脅威の存在だった。
それを証明するように、パンサラッサはドバイターフ(G1)を優勝(ロードノースと1着同着)、シャフリヤールはドバイシーマクラシック(G1)を優勝し、日本馬のレベルの高さを世界にアピールした。
その一方、「この2頭が大阪杯に出走していれば……」と思ったファンも少なくなかったのではないか。そんなことは競馬ファンなら誰もが考えるだろう。国内ではなく海外遠征のリスクを背負って最高の結果を残した陣営の選択は確かに正しかった。
そして、賞金面を考慮した場合、むしろ大阪杯を選択する方が「損」という見方もできる。
かつては天皇賞・春(G1)の前哨戦でもあったG2時代の大阪杯。2017年からG1に昇格し、賞金も前年の6700万円から1億2000万円に増額され、春の目標として関係者の注目度は急上昇した。
2020年には1億3500万円、さらに6500万円増額された今年の1着賞金は、なんと2億円。これは上半期の総決算といわれる宝塚記念(G1)と同じく、前期の最高賞金ともなっている。
この背景には、開催時期の近いドバイのG1を意識したためと容易に想像もつくが、競合相手はそれを遥かに上回っているのだから、有力馬が流れてしまったのも十分に納得がいく。
何しろドバイターフは約3億5000万円、ドバイシーマクラシックは約4億2500万円であり、それぞれ1着賞金は大阪杯の1.5倍、2倍なのである。その上、パンサラッサは「広尾サラブレッド倶楽部」、シャフリヤールは「サンデーレーシング」の一口クラブの所有馬だ。わざわざ強いエフフォーリア相手の大阪杯に使うより、日本馬と相性のいいドバイで賞金を稼ぐメリットの方が大きい。
各陣営からすれば、エフフォーリアを倒しても2億円しかもらえない大阪杯より、海外で大阪杯以上の賞金を手に入れる方が、よりチャンスも大きいと考えても不思議ではなかったのかもしれない。
サウジカップデーでも世界に通用するレベルにあることを証明した日本馬。競馬ファンとしては喜ばしいことではあるが、その影響で肝心の国内G1が盛り上がらないようでは、本末転倒ともなりかねない。
今後もこういった事例が増える一方となることも予想されるだけに、JRAも早急な対策を迫られるのではないか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。