JRA ジャックドールが藤岡佑介の「騎乗スタイル」変えた!? ド派手な追い込み「イメージ」から一転で高まる打倒エフフォーリアの気運

撮影:Ruriko.I

 4月3日、阪神競馬場で行われる大阪杯(G1)。これが2022年最初のレースとなる昨年の年度代表馬エフフォーリアが大きな注目を集める中、有力な対抗馬として期待されているのが、現在5連勝中と勢いに乗って初のG1に挑むジャックドール(牡4歳、栗東・藤岡健一厩舎)だ。

 昨年9月に藤岡佑介騎手とのコンビで1勝クラスを勝つと、そこからトントン拍子で連勝街道へ。今年1月に白富士S(L)を勝ち、さらには初の重賞挑戦となった前走の金鯱賞(G2)でレイパパレやアカイイトといったG1馬を完封。重賞初制覇を成し遂げている。

 未勝利突破が3歳の4月と遅かったため、早くから出世していた同世代のエフフォーリアとの対決は今回が初めて。新馬勝ちから4連勝で皐月賞(G1)を制し、続く日本ダービー(G1)では敗れはしたもののハナ差2着と世代屈指の強さを見せてきたエリートに対して、走るたびに強くなった叩き上げの超新星がどんな戦いを見せるのか、大きな注目が集まる。

 大一番を前に、相棒である藤岡佑騎手の調子が良いのも心強い。先週はピースオブエイトで毎日杯(G3)を制し、ジャックドールの金鯱賞に続く今年重賞2勝目。2日間で3つの勝ち星を挙げて、大阪杯ウィークに向けて弾みをつけた。

 中でも気になったのが、土曜阪神の競馬ぶりだ。毎日杯は初騎乗のピースオブエイトで積極的に先手を奪うと、そのまま先頭を譲ることなく逃げ切り勝ち。雨が降る稍重の馬場を読み切り、スピードの持続力が問われる勝負に持ち込んだことで、1番人気ドゥラドーレスの切れる脚を封じ込めた。

 さらに驚きだったのが、7頭立ての6番人気ヴァンルーラーで勝った9Rの君子蘭賞(1勝クラス)である。こちらも初騎乗ながら、少頭数特有のスロー逃げに持ち込み、してやったりの逃げ切り。後半の2レースで波乱の立役者となった。

藤岡佑介騎手

 なぜこの2つのレースが引っかかったのか。理由は藤岡佑騎手に対する固定観念にある。ファンの方の中にも、藤岡佑騎手といえば“追い込み”というイメージを抱いている方も少なくないのではないか。

 記憶に新しいのが、ケイアイノーテックで制した2018年のNHKマイルC(G1)だ。このときは4角15番手から上がり最速33秒7の脚を使っての差し切り勝ち。武豊騎手の騎乗停止によって巡ってきたチャンスを生かし、デビュー15年目にして初のJRA・G1勝利を掴み取った。

 ほかにも11番人気のスマートオーディンで勝った2019年の阪急杯(G3)やキングズガードで優勝した2017年のプロキオンS(G3)が、藤岡佑騎手に追い込みの固定概念を植え付けたレースであろう。どちらも道中は後方だったが、直線で大外から一気に伸びて前をまとめて捉えたレースだった。

 そんなド派手な勝利が印象に残っている一方で、上がり最速の脚を使いながら取りこぼしたレースというのも少なくない。

 最近では、単勝1.8倍のディヴィーナで上がり33秒6を使いながら6着に敗れた2月の武庫川S(3勝クラス)が思い浮かぶ。スタートの後手という情状酌量の余地はあるとはいえ、ネットの掲示板やSNSなどで一部のファンから「1着より上がり1位を狙っている」と揶揄されたこともあった。

 そんな藤岡佑騎手が、短い間隔で立て続けに見せた積極的な姿勢。それも初騎乗の馬で、人気薄でも人気サイドでも関係なくその姿勢を見せたという裏には、やはりジャックドールの存在があったのではないか。

 普通は騎手が馬を教育して脚質に幅を持たせていくものだが、時として名馬は騎手を育てる。そういった点からも、ジャックドールには名馬となる資質があるといえるだろう。そこで求められるのは結果、G1勝利というタイトルを重ねていくことで、ようやく名実ともに認められる。

 同世代の年度代表馬、立ちはだかる相手はこれまで以上に強大。大阪杯は、一戦ごとに成長を見せてきたジャックドールと藤岡佑介の真価が問われるレースとなりそうだ。

(文=木場七也)

<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。

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