JRAあのオグリキャップやシンボリクリスエスなどの超一流馬も越えられなかった「3歳秋のジンクス」がエフフォーリアを直撃!? 無理なローテが生んだ名馬の悲劇とは
3日、阪神競馬場で開催された大阪杯(G1)で単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持された昨年の年度代表馬、エフフォーリアは中団から見せ場なく9着に敗れた。昨年、三冠馬コントレイルを天皇賞・秋(G1)を力でねじ伏せ、年末の有馬記念(G1)ではディープポンド、クロノジェネシスらを一頭だけ次元の違う豪脚で完封した現役最強馬の不可解な大敗に困惑するファンも多いことだろう。
歴代の二冠馬や三冠馬といった3歳シーズンにG1を複数勝つような名馬は、春の初戦で実力通りに好走することが多い。その一方、今一つ調子が上がらず、どう見ても格下相手に春シーズン初戦に取りこぼした名馬もいる。
オルフェーヴルがギュスターヴクライに不覚を取った2012年の阪神大賞典(G2)や、シンボリクリスエスが5着に敗退した2003年の宝塚記念(G1)、昨年のコントレイルの大阪杯などが挙げられよう。
馬の成長期である3歳戦で激戦を繰り広げた馬が4歳になってその反動で不調になったり、故障して4歳春のシーズンを棒に振ったりするのは珍しくないが、中でも天皇賞・秋を3歳で走った馬は、翌年の春シーズンで躓くケースがも目立つ。
グレード制導入以降、30頭以上の3歳馬が天皇賞・秋に出走しているが、翌年の春シーズンに国内G1を勝った馬は、天皇賞・春(G1)を優勝したフェノーメノただ1頭である。
この中には、あのオグリキャップ、シンボリクリスエス、ダイワメジャー、バブルガムフェロー、サートゥルナーリアなど錚々たるメンバーがいるが、皆4歳の春に故障したり、絶不調に陥ったのだ。
天皇賞・秋自体、成長途上の3歳馬には「鬼門」ともいえるレースであり、過去にはシンボリクリスエス、バブルガムフェロー、エフフォーリアしか優勝例はない。エフフォーリアの勝利もシンボリクリスエス以来なんと19年ぶりの出来事である。
それだけエフフォーリアが凄いということにもなるわけだが、それだけの名馬をしても「3歳で天皇賞・秋を使った馬が4歳春でG1を勝てない」というジンクスを打ち破ることができなかったわけである。
3歳馬の古馬混合戦の初戦は神経を使う。若い3歳馬が初めての古馬相手に戸惑って、なかなか思うような結果を出せないことも多いからだ。また、天皇賞・秋が施行される10月は3歳馬にとって成長期にあたり、その時期に歴戦の猛者である古馬とG1の大舞台で激戦を繰り広げることが、若馬の成長に大きく負担をかけるのは想像に難くないだろう。
3歳で天皇賞・秋を使った後、体調を崩して深刻なスランプに陥る馬も多く、バブルガムフェローは天皇賞・秋を制した次走のジャパンカップで不可思議な13着に大敗した。
ダイワメジャーも3歳で天皇賞・秋に挑んだ結果、17着に沈み、次にG1を勝ったのは5歳秋まで待たなければならなかった。最近ではサートゥルナーリアが挑戦したが、直線半ばでガクっと何かアクシデントが発生したかのように失速した。結果、4歳時は体調面での問題が続き、僅か2戦しか出走できずに引退した。
さらには3歳で天皇賞秋を使った馬はその後、ジャパンC(G1)や有馬記念を連戦することも多く、3歳馬に古馬混合G1を連戦させる無理なローテーションが馬を消耗させ、体調面や精神面での不調、脚の故障を引き起こすのではなかろうか。
2017年のオークス(G1)馬、ソウルスターリングのようにスランプから最後まで立ち直れなかったケースもあることを考えると、エフフォーリアの今後も心配である。
(文=パッパラー山中)
<著者プロフィール>
皇帝シンボリルドルフの代表産駒トウカイテイオーの舞うようなフットワークに魅せられて競馬を始める。人生で1番泣いたのは前年の大敗から1年ぶりの復活勝利を決めた1993年の有馬記念(G1)。感動のあまり競馬場で泣いて電車で泣いて家で泣いた。馬券はパドック派。今までで1番「こりゃすんげえ馬体」と思ったのはサクラケイザンオー。