JRA皐月賞(G1)横山武史キラーアビリティVS武豊ドウデュースはどちらに軍配? 直接対決は勝率100%! ホープフルSと朝日杯FS優勝馬の対戦成績はコチラ
今週の皐月賞(G1)は2頭の初対決に注目したい。ホープフルS(G1)の優勝馬キラーアビリティ、そして朝日杯FS(G1)の優勝馬ドウデュースである。
今年は出走予定馬18頭のうち10頭が重賞馬で、そのうち2頭がG1の勝ち馬と粒ぞろい。弥生賞ディープインパクト記念(G2)のアスクビクターモア、スプリングS(G2)のビーアストニッシド、若葉S(L)のデシエルトといったトライアルレースの勝ち馬。そして主要レースである共同通信杯(G3)のダノンベルーガ、京成杯(G3)のオニャンコポン、東京スポーツ杯2歳S(G2)のイクイノックスも揃っているのだから、まさに豪華絢爛だ。
過去の皐月賞において、ホープフルSと朝日杯FSの優勝馬が直接対決したことは3回ある。結果は、3回すべてでホープフルSの優勝馬が先着し2勝している。この事実が示すことはひとつしかあるまい。ホープフルSの優勝馬が、朝日杯FSの優勝馬よりも皐月賞では優位ということだ。
■ホープフルS馬と朝日杯FS馬の皐月賞成績
2021年
ホープ ダノンザキッド 15着
朝日杯 グレナディアガーズ 不出走
2020年
ホープ コントレイル 1着
朝日杯 サリオス 2着
2019年
ホープ サートゥルナーリア 1着
朝日杯 アドマイヤマーズ 4着
2018年
ホープ タイムフライヤー 10着
朝日杯 ダノンプレミアム 不出走
2017年
ホープ レイデオロ 5着
朝日杯 サトノアレス 11着
2016年
ホープ ハートレー 不出走
朝日杯 リオンディーズ 5着
2015年
ホープ シャイニングレイ 不出走
朝日杯 ダノンプラチナ 11着
なぜ、こういった成績になるのか。これはホープフルSと朝日杯FSの歴史から読み解くのが分かりやすい。
明確になったマイル路線とクラシック路線
朝日杯FSはもともと中山の1600mで行われていた。それが2014年から阪神で行われるようになり、中山で2歳重賞がなくなったことを受け、12月の阪神で行われていたラジオNIKKEI杯2歳S(旧ラジオたんぱ杯2歳S)がホープフルSの名称に替わり、2014年から朝日杯FSと入れ替わるように中山で行われるようになった。
ホープフルSはラジオNIKKEI杯2歳Sの歴史を引き継いでいることもあり、中山に移行して最初の2014年から第31回で、しかもG3からG2に昇格。その後2017年からG1に格上げされ、一気に2歳路線の最重要レースに位置づけられるようになった。G1昇格後の優勝馬4頭のうち、2019年にはサートゥルナーリア、2020年もコントレイルが皐月賞を勝利している。
一方でかつてミホノブルボン、ナリタブライアン、ロゴタイプなどの皐月賞馬を輩出した朝日杯FSは、阪神で行われるようになってからパッタリと関連性が止まった。2015年以降5頭の朝日杯FS馬が皐月賞に出走したが、サリオスの2着が最高で、他はすべて4着以下に敗退している。
この成績からも、ホープフルSのG1格上げに伴い、皐月賞へ向けた朝日杯FSとの差はより鮮明になったと言える。朝日杯FSの優勝馬はマイル寄りのため、中山の2000mを克服するのは容易ではないのだろう。
その結果、2歳から3歳に向けた牡馬の路線が、マイルと中距離で明確に分かれたと考えられる。つまりNHKマイルC(G1)と皐月賞を目指す馬は朝日杯FSを選び、皐月賞と日本ダービー(G1)を目指す馬はホープフルSを選択するという状況だ。
そしてもう一点、中山で行われるホープフルSと、阪神で行われる朝日杯FSで大きな違いがある。ホープフルSは皐月賞と同じコース、距離であるだけでなく、2歳の重要な時期に中山への輸送を経験できるという関西馬のメリットが大きいのだ。
実際にホープフルSを勝利して皐月賞を制したコントレイルとサートゥルナーリアはともに関西馬で、ホープフルSから直行だったという経緯がある。中山への輸送を経験しているだけに、弥生賞やスプリングSといったトライアルを使う必要がない。これも大きなメリットと言えるだろう。
以上の理由から今年の皐月賞を検証すると、ホープフルS優勝馬キラーアビリティと朝日杯FS優勝馬ドウデュースでは、キラーアビリティが圧倒的に有利。
確かに鞍上の横山武史騎手は高松宮記念(G1)のレシステンシア、大阪杯(G1)のエフフォーリア、桜花賞(G1)のナミュールと1番人気のG1で3連敗という不名誉な記録を作ってしまった。
しかもキラーアビリティはそれらの馬と同じ、ノーザンファームの生産馬でキャロットファームが馬主というのだから、ファンの間でもネガティブな空気が漂っているかもしれない。
だがホープフルS優勝馬の皐月賞を見る限り、そして昨年だけでG1を3勝と横山武騎手が得意とする中山コースであることを踏まえると、ここはキラーアビリティに絶好のチャンスがやってきたと考えていいのではなかろうか。
週末の皐月賞まであとわずか。果たしてどんなレースになるか、注目の一戦から目が離せない。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。