元JRA藤田伸二氏「消極騎乗」に心中複雑、ドウデュースが一番強いと評価も…「物足りなさ」の原因は武豊とは別の騎手?
18日夜、G1開催日翌日の恒例となりつつあるアノ人物によるYouTube生配信が行われた。主催はもちろん元JRA騎手の藤田伸二氏だ。
自身の『藤田伸二チャンネル』で、21時から始まった配信は「皐月賞 回顧&雑談」という題名通り、前日に行われた皐月賞(G1)の回顧に大半の時間が割かれた。
生配信を見逃した方はぜひ本動画をチェックしてもらいたいが、藤田氏は上位入線馬を中心に何頭かをピックアップ。元騎手の視点からジオグリフの福永祐一騎手やイクイノックスのC.ルメール騎手らの騎乗に対し、率直に感じたことを解説している。
1~2着馬の明暗を分けた要因として藤田氏が挙げたのが2角手前の両者の動きだった。スローペースと読んだルメール騎手がスッと前目につけたのに対し、福永騎手はジッと我慢。藤田氏は、この福永騎手の判断を「本当に祐一がうまかった」と、ジオグリフの最大の勝因に挙げている。
また、1番人気を裏切り3着に敗れたドウデュースの武豊騎手の騎乗には、「一番強いレースをしたのはユタカさんの馬」としたうえで、1角までの「ポジション取りが後ろすぎた」ことを敗因に挙げた。
また、レース全体を振り返った場面では、「レース的には面白かった」、「見応えあるいいレースだったんだけども……」と、やや奥歯に物が挟まったような言い方をした藤田氏。「ちょっと物足りなさも感じたよね……」と、心に引っ掛かるシーンもあったようだ。
「藤田氏が物足りなさの要因として挙げたのが、G1レースとしてはかなり緩いペースになったことです。1000mの通過タイムは60秒2。この日の(荒れた)馬場を加味しても、皐月賞としては少し遅かったですね。そのペースを演出したアスクビクターモアが、実は藤田氏の本命馬だったんです。
アスクビクターモアは、1コーナーまでに押し出されるようにハナに立つと、道中は終始マイペースで先頭を進みました。直線を向いた時も手応えは悪くなかったのですが、結果は5着。もしかすると藤田氏の本命馬が圏外に沈んだことも物足りなさの理由だったかもしれません」(競馬誌ライター)
「物足りなさ」を感じた原因は武豊とは別の騎手?
もう一つ、藤田氏が指摘したのが、デシエルトの岩田康誠騎手の騎乗だった。
「アスク(ビクターモア)がペースを落として淡々と逃げてる中で、康誠はほぼ立ち上がるくらいの感じで引っ張って……」と、話題はゲートで躓きながら二の脚を使って2番手につけたデシエルトに移行。「ハナ行ってる馬にプレッシャーも与えることなく、2番手を取って……」と、遠回しにG1らしからぬ緩いペースの遠因を作った岩田康騎手の手綱さばきについても触れた。
「確かにデシエルトはスタートで躓きましたが、1コーナーまでに挽回し、鞍上の判断次第で途中からハナを奪うこともできたと思います。しかし、藤田氏の指摘通り、岩田康騎手は2番手追走を選択。前走逃げ切っていた馬だけにやや消極的にも映りましたね。結果的にデシエルトは16着に終わりました。
藤田氏としては、アスクビクターモアの逃げは想定外だったようです。ただし、逃げた以上は本命馬が後ろの馬に絡まれるのも嫌だったはずです。田辺裕信騎手の想定外の作戦と岩田康騎手の消極騎乗の狭間で藤田氏の心も揺れ動いていたのかもしれません」(同)
もし岩田康騎手がもっと積極的な騎乗をしていれば、藤田氏が言う“物足りなさ”もなかったかもしれない。ただし、どちらにしても誤算だったのは田辺騎手の「逃げ」だったことは間違いなさそうだ。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。