JRAフローラS(G2)有名評論家も懸念したキタサンブラック産駒の弱点!? 「グランアレグリア2世」ラスールが越えなければならない父の不安
先週行われた皐月賞(G1)は、昨年に初年度デビューを果たしたドレフォン産駒とキタサンブラック産駒での歴史的ワンツー決着となり、新種牡馬の注目度が益々高まった。
そして今週末に東京競馬場で行われるフローラS(G2)には、ドレフォン産駒こそいないものの、キタサンブラック産駒の牝馬3頭が出走を予定している。
なかでも多くの競馬ファンの視線を集めているのが、ラスール(牝3、美浦・宮田敬介厩舎)だろう。現在『netkeiba.com』の予想オッズでは、単勝1番人気想定となっており、当日も上位人気の一角を担いそうだ。
同馬といえば、新馬戦勝利後に主戦のC.ルメール騎手が「新しいグランアレグリア」と評価し、話題となった逸材。当初は、同じキタサンブラック産駒で先週の皐月賞で2着したイクイノックスに勝るとも劣らない評価を得ていた。
ところが、2戦目のシンザン記念(G3)で単勝1倍台の断然人気を背負うも7着に敗れ、戦前の大きな期待感はアッサリと薄れていった。その後、前走の3歳1勝クラスでは人気に応えて快勝したものの、メンバー的にもやや小粒感があり、再度の重賞挑戦で改めて真価が問われそうな局面だ。
しかしながらキタサンブラック産駒の傾向を見ると、ラスールの好走を疑問視したくなるような要素が浮かび上がってくる。
「新種牡馬キタサンブラックの特徴として、『競馬予想TV!』(フジテレビ系)などの出演でお馴染みの競馬評論家の亀谷敬正氏は、『タイプ的にはシンボリクリスエスと似ている』と昨年の新馬がデビューする6月に、自身のYouTubeチャンネルで解説していました。
引退時には、キタサンブラック同様の540キロ近い大型馬だったシンボリクリスエスは、牡馬ではエピファネイアなどのG1馬を輩出しましたが、意外にも牝馬に至っては重賞勝ち馬すら出ていません。
その原因として、『スピードを求められる日本の馬場において、大型の種牡馬は強い牝馬を生み出しづらい』と亀谷氏は語っており、ラスールにとっては分が悪いデータかもしれません」(競馬誌ライター)
ラスールが越えなければならない父の不安
実際、キタサンブラック産駒の現在までの成績を振り返ると、牡馬の勝ち上がり率が41.7%(対象36頭)なのに対し、牝馬の勝ち上がり率は26.7%(対象30頭)で圧倒的に牡馬が優勢となっている。さらに、牡馬ではイクイノックス、ブラックブロッサム、ガイアフォースなどの大物候補が数頭あがるが、牝馬で目立つ存在はラスールやビジュノワール程度だ。
重賞勝ち馬は昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)を制した牡馬のイクイノックスのみで、レース数こそまだ少ないものの、傾向としてはここまで亀谷氏のほぼ予想通りとなっている。
また、父キタサンブラック同様に産駒は、どちらかというと瞬発型より持続型の方が多く、現にラスール自体もラスト3ハロン33秒台の脚を使ったことはない。前走は強い勝ち方だったが、当時は重馬場でのもので、逆に時計のかかる馬場の方が向いているという見方もできる。
今回はオークス(G1)への優先出走権が与えられる2着以内を是が非でも取りたいラスール陣営だが、果たしてこの血統的な不安要素を覆すことが出来るであろうか。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?