JRA【NHKマイルC(G1)展望】“ウマ娘”藤田晋オーナーG1初制覇へ、武豊ジャングロ堂々出陣! 強敵セリフォス、ダノンスコーピオンに加え「遅れてきた大物牝馬」が不気味?
8日、東京競馬場では第27回NHKマイルC(G1)が行われる。昨年の朝日杯FS(G1)で2、3着に好走した2頭を中心として例年以上の混戦ムード。見逃せない一戦となりそうだ。
1番人気に推されるのは、おそらくこの馬になるだろう。昨年6月の新馬戦から新潟2歳S(G3)、デイリー杯2歳S(G2)と無傷の3連勝を飾ったセリフォス(牡3歳、栗東・中内田充正厩舎)である。
4連勝を狙った朝日杯FSでは、C.デムーロ騎手を背に堂々の1番人気に推された。平均よりやや速いペースで流れたレースで、先団を前に見る絶好位を追走したセリフォス。直線ではいったん先頭に立ち、そのまま押し切るかと思われたが、外からドウデュースに差し切られて2着。デビューからの連勝は「3」で止まった。
その後は前哨戦を使わず、直行でNHKマイルCへの参戦が決まると、4月上旬に放牧先から栗東に帰厩。坂路を中心にじっくり乗り込まれてきた。
今回セリフォスと新たにコンビを組むのは福永祐一騎手。フェブラリーS(G1)のカフェファラオ、皐月賞(G1)のジオグリフを、いずれもテン乗りで優勝に導いている。陣営には何とも心強い乗り替わりといえるだろう。
一方で、懸念材料に挙げられるのが中内田厩舎の早熟傾向だ。昨年初のリーディングトレーナーに輝き、43歳にしてすでにG1を3勝している中内田調教師。着々と実績を築いているが、G1勝利はすべて2歳戦でのもの。3歳以降のG1は40戦未勝利で“早熟厩舎”というありがたくないレッテルを貼られることもしばしば。
昨年の当レースにも2歳マイル王のグレナディアガーズを送り込み、1番人気に支持されたが、3着に敗れている。レッテル返上へ、ここは究極の仕上げを期待したい。
朝日杯FSでセリフォスに半馬身差の3着だったダノンスコーピオン(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)は、それ以来の直接対決で逆転を狙う。
ぶっつけ本番のセリフォスに対し、こちらは今年に入ってこれが3走目。まさに対極のローテーションだが、叩かれながら状態は上向いている。
今年の始動戦は2月の共同通信杯(G3)だった。皐月賞(G1)を見据えての一戦だったが、体調が万全ではなく、まさかの7着。その後は在厩で調整しながら、状態回復を待った。
復調の兆しを見せたことで、陣営はアーリントンC(G3)を選択。改めてマイル路線に矛先を向けてきた。その前走は、「まだ7~8割の出来」という陣営コメントがあるなか、中団待機から直線一気の差し切り勝ち。約半年ぶりの勝利で、完全復活を印象付けた。
これまで唯一崩れたのが長距離輸送となった東京での共同通信杯。今回はアーリントンCから中2週での長距離輸送。それさえクリアできれば、打倒セリフォスの1番手はこの馬になるだろう。鞍上はセリフォスにも2度騎乗したことがある川田将雅騎手。ライバルをよく知る鞍上の存在は心強い。
展開のカギを握るのは前哨戦のニュージーランドT(G2)を逃げ切り、3連勝を飾ったジャングロ(牡3歳、栗東・森秀行厩舎)か。
6ハロン戦を逃げ切れるスピードを最大の武器としているが、単なる一本調子の逃げ馬というわけではない。3走前の中京2歳S(OP)は逃げてレコード勝利を収めたが、2走前のマーガレットS(L)は好位4番手から押し切っている。今回もハナを主張する馬が他にいれば、無理には逃げないだろう。
不安要素を挙げるとすれば、中山から東京へのコース替わりか。東京マイルで行われた昨年11月のベゴニア賞(1勝クラス)は自己ワーストの6着に敗れている。ただし、勝ち馬とは0秒2差と、着順ほど負けていない。その後の成長を見る限り、今なら東京でも十分好走する可能性はあるはずだ。
“ウマ娘”オーナーこと藤田晋氏が手綱を委ねるのは、8戦中7戦でコンビを組む武豊騎手。馬主歴1年未満で重賞を制した強運を味方に、府中に“ウマ娘”旋風を巻き起こせるか。
ニュージーランドTで、そのジャングロにアタマ差及ばず2着に敗れたのがマテンロウオリオン(牡3歳、栗東・昆貢厩舎)である。
新馬戦2着後、飛び級で万両賞(1勝クラス)に挑戦すると、最後方から大外一気の末脚で初勝利。続くシンザン記念(G3)では一転、好位からの競馬を試み、直線インを突いて押し切った。
重賞2連勝を目指し、1番人気に支持された前走は中団から脚を伸ばしたが、外を通った分、ジャングロには届かなかった。デビュー2戦目からコンビを組み、様々な競馬を試してきた鞍上の横山典弘騎手。ついに迎える大一番で策士は、果たしてどんな手を打つのか。
4月30日から短期免許で騎乗中のD.レーン騎手はインダストリア(牡3歳、美浦・宮田敬介厩舎)とコンビを結成。リスグラシューで制した19年有馬記念以来のJRA・G1制覇を狙う。
デビュー2戦目で勝ち上がったインダストリアは、続くジュニアC(L)も勝利し、弥生賞(G2)ではドウデュースに次ぐ2番人気に支持された。ところが、後方から上がり3ハロンをメンバー最速時計で追い込むも5着に敗れた。位置取り次第では上位争いに加わっていただろう。
前走から2ハロンの距離短縮、そしてレーン騎手の配置がシナジー効果を生むか。
ファルコンS(G3)を制したプルパレイ(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)は、デビューから手綱を取るM.デムーロ騎手とのコンビで2連勝をもくろむ。
カギは3戦ぶりとなる1600mへの対応だろう。近2走は7ハロン戦で控える競馬をして結果を残している。それまでは逃げ・先行で、1600mでは頭打ちの状態だった。8着に敗れた朝日杯FS以来となるマイル戦で、道中うまく脚を溜めることができるか。
ソネットフレーズ(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)は素質だけなら、今年のメンバーでも1、2を争う存在だ。
新馬戦勝利後のデイリー杯2歳S(G2)は、直線でセリフォスとの一騎打ち。惜しくもクビ差2着に敗れたが、桜花賞(G1)候補に名乗りを上げていた。
今年は2月のクイーンC(G3)で始動する予定だったが、脚部不安で回避。結局、桜花賞にも間に合わず、一流牡馬マイラーが集うここに矛先を向けてきた。G1の大舞台でエアグルーヴ一族の底力発揮となるか。
この他には短距離路線に転向後、ファルコンSとアーリントンCで連続2着に好走しているタイセイディバイン(牡3歳、栗東・高野友和厩舎)、骨折によるブランク明け初戦のアーリントンCで3着に好走したキングエルメス(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)、桜花賞8着からの逆襲を誓うアル―リングウェイ(牝3歳、栗東・藤岡健一厩舎)、皐月賞(G1)から唯一転戦してきたダンテスヴュー(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)なども侮れない。
対照的なローテーションで臨むセリフォスとダノンスコーピオンの一騎打ちとなるのか。武豊のジャングロがそのスピードを如何なく発揮するのか。それとも伏兵陣の大駆けはあるのか。注目のNHKマイルCは8日、15時40分に発走予定となっている。