JRA武豊×超大物ジュタロウの圧勝劇に危険信号!? カフェファラオ上回る歴代2位の好タイムは「G1級」の証か、「泥濘」への第一歩か
「ゲートで落ち着いたし、2番手を取れたところで勝負ありでしたね」
先月30日、東京6Rに行われた3歳1勝クラス(ダート1600m)は、2番人気のジュタロウ(牡3歳、栗東・河内洋厩舎)が前走9着から巻き返して待望の2勝目を挙げた。
手綱を執った武豊騎手のコメント通り、ゲートを出ると抜群の行きっぷりで好位2番手に。1000m通過58秒1の速い流れになったが、残り2ハロン過ぎで抜け出すと、最後まで脚色が衰えず、終わってみれば後続に4馬身差つける圧勝劇だった。
勝ち時計の1分34秒8は、東京ダート1600mの3歳戦において歴代2位の好タイム。ちなみに3位はフェブラリーS(G1)2連覇中のカフェファラオが持つ1分34秒9、4位は2018年のJRA最優秀ダートホース・ルヴァンスレーヴの1分35秒0で、共に6月のユニコーンS(G3)で記録されたものだ。
武豊騎手が「ケンタッキーダービーへ」と訴えた大器
ジュタロウは元々、昨年11月の新馬戦で2着馬に2秒4の大差をつける衝撃のデビューを果たしており、鞍上の武豊騎手が「ケンタッキーダービー(米G1)に行きたい」と陣営に訴えかけたほどの逸材である。
その初戦よりも体重を減らしていたことが、近2走で精細を欠いた理由の1つとしてあったかもしれない。この馬の潜在能力を考えると、馬体が8キロ戻った今回は、これくらいは走れて当然だったか。
管理する河内師も「ひと息入れて状態はいい、少しずつ成長してきている」と話しており、次は来月19日のユニコーンSを目標にすると発表済みだ。その走りに大きな注目が集まることは間違いないだろう。
そんなジュタロウだが、先述の通りカフェファラオやルヴァンスレーヴのタイムを上回ったことは喜ばしい。だが、歴代1位の記録保持者であるスマッシャーが、近走で凡走続きなのは、やや気になる点かもしれない。
現4歳でマジェスティックウォリアー産駒のスマッシャーは、昨年1月の未勝利戦と続く1勝クラスを連勝。端午S(OP)3着を挟んでユニコーンSに出走すると、中団から脚を伸ばして3歳歴代ナンバーワンの時計である1分34秒4で快勝している。
しかし、カフェファラオやルヴァンスレーヴの記録を更新したにもかかわらず、簡単にG1のタイトル奪取とまではいかないのが競馬の難しいところだ。
次走のジャパンダートダービー(G1)こそ1着とタイム差なしの4着に好走したものの、休養を挟んで出走したグリーンチャンネルC(L)から前走の名古屋城S(OP)まで、4戦連続で勝ち馬から1秒以上離された大敗を喫している。
将来を嘱望されたユニコーンSの走りからは信じられないような凡走を続けており、ネットにも「もうあの輝きは戻らないのか」「ユニコーンSのことは一旦忘れよう」といった書き込みが寄せられている始末だ。
「もしかするとそのユニコーンSを速いタイムで走りすぎてしまったことで、反動が出ているのかもしれませんね。カフェファラオも同レースを好時計で快勝した後、次戦のジャパンダートダービーでは不可解な敗戦を喫していました。
同時期に行われる日本ダービー(G1)でも、好タイムの優勝馬はその後に故障や引退するケースが目立ちます。成長段階である3歳春の時点で走りすぎてしまうのも、かえってよくないということでしょうか」(競馬誌ライター)
もちろんスマッシャーにもこれから巻き返す可能性は十分あるだろうが、それでも復活には約1年以上を要することになる。未完成の若駒が大駆けする代償は、それだけ大きいということなのかもしれない。
特にジュタロウは、3歳4月の時点で東京ダート1600mを1分34秒台で走破した初めての馬ということにもなるので、今後は反動が出ないかが気になるところである。
歴代2位の好時計での勝利は、カフェファラオやルヴァンスレーヴ級の証か、それともスマッシャーのような泥濘みへの第一歩か……。果たして、大器はどちらに進むことになるのだろうか。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。