大阪杯(G1)マルターズアポジーの前走がヤバイ……「サイレンススズカ級」の”暴走”押し切りに「有馬とは別馬」
29日、今週の東西メイン・ダービー卿チャレンジT(G3)と大阪杯(G1)にダブル登録を行っていたマルターズアポジー(牡5歳、美浦・堀井雅広厩舎)が、後者・大阪杯に出走することが明らかになった。
まさに風雲急を告げる決断だった。思い出されるのは昨年末の有馬記念(G1)。主戦の武士沢友治騎手が「初速が違う」と述べている通り、ここまで一度たりともハナを譲ったことがないマルターズアポジーは、初のG1参戦にもかかわらず堂々とキタサンブラックからハナを奪った。
そんな”韋駄天”が大阪杯の出走を決めたのだから、想定される流れは大きく変わる。大本命キタサンブラックにしても、ハナを譲った有馬記念で敗れていることからも気になるところではあるはずだ。
しかし、マルターズアポジーの有馬記念の結果は15着敗退。それまで2000m以上を経験したことがなく、単純に距離が長かったようだ。
ただ、得るものもあった。それはレース後に武士沢騎手が「G1(有馬記念)での経験が糧になった」と話した、前走の小倉大賞典(G3)の内容を見れば明らかだ。
スタートからいつものように果敢にハナを奪い、あっという間にレースの主導権を握ったマルターズアポジー。だが、すでに福島記念(G3)勝ちのある本馬をライバルたちも楽には行かせない。その結果、1000m通過は57.6秒という異例にハイペースとなった。
これがどの程度「ヤバイ」のか、1998年に中京開催だったこのレースを逃げ切ったサイレンススズカの1000m通過が57.7秒と述べれば、わかりやすいかもしれない。つまり、並みの逃げ馬では「暴走」の域に達しているということだ。
しかし、マルターズアポジーはここから後退するどころか、さらにスピードを維持したまま最後の直線へ。逆に追いかけた馬がバタバタと脱落する中、最後は2馬身差をつけてゴールに飛び込んでいる。
逃げ馬にとって決して楽な展開でなかったことは、2番手を追走したマイネルハニーが最下位に沈んだことからも明らか。2着には後方で競馬していたヒストリカルが入り、上位陣は軒並み中団より後ろで競馬した馬で占められている、典型的な後方有利のレースだった。
その中で唯一、3番手から4着に好走したロードヴァンドールはその後、強敵揃いの金鯱賞(G2)で2着に食い込んでいる強豪。だからこそ、このペースを逃げ切ってしまったマルターズアポジーの強さが光る。