JRA「10億まで降りる気はなかった」話題のオーナーが執念の落札、ドゥラメンテ産駒の超良血がまた億超え…「期待ハズレ」の烙印押すには時期尚早!?
今度こそ“当たり”を引けるだろうか……。
関係者のみならず、多くの競馬ファンから注目を集めた日本最大のサラブレッド市場「セレクトセール2022」の1歳馬セールが11日、北海道の苫小牧市にあるノーザンホースパークで開催された。
これまで後のG1を多数輩出してきたイベントだけに、今年も初日から「億超え」の高額落札馬が複数誕生。我々一般のファンにとって、まるで異世界にでも迷い込んだかのような高額での取引には、分かっていても毎年驚かされるばかりである。
例年通り多くの良血馬がリストアップされた今年の1歳馬セールだが、特に目を引いたのは上場番号63番・シーヴの2021(牡)だ。
こちらは毎年のように高額落札馬を出すことで、一部のファンにお馴染みになりつつあるシーヴが母。父のドゥラメンテは今年の天皇賞・春(G1)と宝塚記念(G1)を制したタイトルホルダー、さらには桜花賞(G1)、オークス(G1)を制して今秋の三冠達成に王手を掛けたスターズオンアースらの活躍で種牡馬としての評価もうなぎのぼり。それだけに関係者からも熱い視線が注がれていた。
そして本馬を2億2000万円(税抜き)で落札したのが、「ショウナン」の冠名で知られている国本哲秀オーナーだ。
2020年のセレクトセールでもシーヴの仔(父ディープインパクト)を1歳馬部門における史上最高額となる5億1000万円(税抜)にて落札している国本オーナー。当時、セリ終了後の会見で「10億まで降りる気はなかった」と振り返ったことでも話題となった。
ところが、鳴り物入りでデビューしたシーヴの仔・ショウナンアデイブの現状は、金額に見合うだけの成績を残せていない。昨年10月のデビューから7戦して1勝のみと、春のクラシック参戦も叶わなかった。落札額が高ければ高いほど走るという訳でもないとはいえ、大金を投資したオーナーの落胆は想像に難くない。
「アメリカで2015年にデビューしたシーヴの仔キャスリンソフィア(父ストリートボス)がケンタッキーオークス(米G1)を制したことも、この馬の仔の評価が高い理由のひとつです。
残念ながら上のサトノスカイターフ(父ディープインパクト、4歳牡)も15戦1勝と日本でデビューした産駒からは、これといった活躍が出来ていません。今後の可能性が未知数の繁殖牝馬とはいえ、2頭目を所有することは国本オーナーにとっても少し勇気が必要だったかもしれませんね」(競馬記者)
「期待ハズレ」の烙印押すには時期尚早!?
一部のファンからシーヴに対し、早くも“期待ハズレ”という声も出始めているが、産駒のショウナンアデイブにあれほど惚れ込んだ経緯を考えれば、まだまだ可能性を信じているということだろう。
確かに同じ母を持つ兄弟で三冠馬もいれば、未勝利に終わる馬も珍しくないのが競走馬の世界。上が思うような成績を残していなかったとしても、弟や妹も同じとは限らない。13歳というシーヴの若さもまた魅力だ。
そしてシーヴの2021は既にこの世を去ったドゥラメンテの貴重な後継馬候補となる1頭でもあり、もしG1を勝つようなら種牡馬としても大きな期待を懸けられるはず。
意地とプライドが垣間見えた国本オーナーの決断が正解だったのか、それとも不正解だったのかは、シーヴの2021のデビュー後に明らかになる。これで3年連続となる億超えの産駒を送り出したシーヴだが、期待ハズレの烙印を押されないためにもそろそろ意地を見せたいところだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。