JRA木幡初也「大斜行」で騎乗停止も降着なしに疑問の声!?
24日に福島競馬場で行われた5Rの新馬戦は、ちょっとした「荒れたレース」になった。
1番人気のラパンラピッドが勝利したものの、3着に最低人気のウェンス(牡2歳、美浦・杉浦宏昭厩舎)が入線し、三連単は26万1430円という思わぬ高配当となった。だが、“荒れた”のは配当だけではなかったようだ。
「完全に斜行だろ――」
レース直後から、一部のファンから疑問の声が上がった矛先は、波乱の立役者となったウェンスだ。中団から捲るように追い上げ、最後の直線では勝ち馬と2着馬との横一線の勝負に持ち込んだが、同時に外側へ大きく斜行……。
4着シルバーニース、5着クレアチョウサンの2頭が不利を受けるアクシデントがあった。
「うーん、後味の悪い残念なレースになってしまいましたね。最後の直線の勢いはよかったんですが、鞍上の木幡初也騎手が右ムチを入れた際に、外側へ大きくヨレてしまいました。
直後を走っていたクレアチョウサンは2度の不利がありましたし、シルバーニースはその煽りを受けた格好。それだけに各関係者にとっても残念なレースになってしまいました」(競馬記者)
また、レース後にはJRAから「最後の直線コースで、2番ウェンスが外側に斜行したため、12番クレアチョウサンおよび9番シルバーニースの進路が狭くなりました」として、ウェンスの木幡初騎手には8月6日、7日の競馬開催2日間の騎乗停止処分が下っている。
着順を決定付けるゴール前でのアクシデントだっただけに、木幡初騎手の騎乗停止も致し方ない判断といえるが、その上での問題は審議による降着がなかったことだ。
「現状、JRAの降着に対するルールは、裁決委が『「その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と判断した場合』となっていますが、今回は非常に際どい判定になったと思いますね。
というのも5着クレアチョウサンは2度の不利があって、特に2度目は致命的なもの。それでも最後はじわじわと伸びていましたし、結果的な着差こそ約2馬身差がつきましたが、スムーズなら3着ウェンスを交わす可能性はあったように見えました。
また、4着シルバーニースに至っては、上がり3ハロン最速を記録しているように、ゴール前の末脚は目を見張るもの。3着のウェンスとは半馬身差ですし、1から3着までがハナ+クビ差とタイム差もなかっただけに、不利がなくスムーズに走れていれば、3着どころか先頭まで突き抜けていたかもしれません」(同)
無論、これらはあくまで記者の主観であり、結果的にJRAが降着としなかった以上、仮に走行妨害がなくともシルバーニース、クレアチョウサンは、ウェンスに先着することはできなかったことになる。
ただ記者が話した通り、今回は非常に際どい判定になっただけに、レース後にはネット上の掲示板やSNSなどで「あれは酷すぎる」「何回パトロールビデオ見ても納得いかない」「降着にならないのはおかしい」「なぜ審議にすらならない?」といった今回の判定に対する疑問の声が殺到している。
無論、そこには最低人気のウェンスが3着だった三連単(276票)と、4番人気のシルバーニースが3着だった場合の三連単(2319票)の売上票数に約10倍の差があったこと、つまりはウェンスが3着に粘ったことで馬券がハズレてしまったファンが多かった事情もあるだろう。
JRAの降着ルールが現行のものになったのは2013年からだが「わかりやすくなった」といった声がある一方で、降着そのものの数が減少していることには以前から疑問の声が上がっている。
実際に、今年2月に池添謙一騎手が騎乗したハギノモーリスが1位入線から3着に降着する事例があったが、降着馬が着順を2つ以上落としたのは、2020年3月の高松宮記念以来、約2年ぶりだったそうだ。
本件に限らず、以前から改善を求める声が後を絶たない現状の降着ルール。果たして、JRAにファンの声が届くのはいつになるのだろうか。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。