川田将雅の「徹底マーク」に戸惑い? C.ホーを悩ませた意外な場外バトル

撮影:Ruriko.I

 短期免許で来日している香港の名手C.ホー騎手だが、その存在感は週毎に増してきている。滞在期間は7月30日から、札幌でワールドオールスタージョッキーズが行われる8月27・28日の週までと短いながら、既に十分な爪痕を残したといえる。

 日本の競馬に戸惑いもあってか、初日の新潟は6連敗したものの、7鞍目に初勝利。それも新潟名物である千直で挙げたように、適応力はなかなかのもの。それまでいいところのなかったダートのレースだが、翌週8月7日のレパードS(G3)では、7番人気カフジオクタゴンであっさり重賞初制覇を飾ってしまった。

 これには本人も「先週はダートはあまり好きじゃないと言いましたが、これでダートレースがもっと好きになりました」と上機嫌。約1か月という短期間の騎乗予定ながら、関係者に「ホーは乗れる」とアピールすることに成功した。

 そして、小倉に初参戦した先週末の開催でも2勝を加算。日曜メインの小倉記念(G3)で2着に敗れはしたものの、コンビを組んだのは10番人気の穴馬ヒンドゥタイムズ。中間の想定では、ピースオブエイトに騎乗を予定していたが、ハンデの53キロに乗ることが出来ないために用意された馬だった。

 身長が167センチで体格も筋肉質なホー騎手だけに、53キロ以下での騎乗はできなかったようだ。外国人は上背がある人が多く、無理に絞ると自身のパフォーマンスが落ちてしまうという考えが主流であり、やむを得なかったのだろう。

 ただ、大舞台で経験を積んだ手腕は確か。香港は欧州などと比べると日本の競馬に似ている部分が多いので、慣れるのにそう時間はかからなかったのかもしれない。

C.ホーを悩ませた意外な場外バトル

 そんな適応力の高さを見せたホー騎手も、日本の慣習でなじめないのが、マスク着用の徹底らしい。

川田将雅騎手

「海外では普段からマスクを着用する習慣がないですし、コロナ禍のピークも過ぎつつあるため、現在は着用する人も殆どいなくなっています。ところが、日本ではマナー的な部分もあって、未だに公共施設や人が集まる場所などで着用を求められている点が慣れないそうです。

マスクをしていると話しづらかったり、息がしづらいために鼻を出したり、顎マスクにしてしまうこともあったようですが、そんな時には川田将雅騎手が目を光らせているようですよ。関係者の間では“マスク警察”なんて言われているようですが、ホー騎手を含め通訳にも声を掛けているみたいです」(競馬記者)

 とはいえ、決して両者の仲が悪いという訳でもない。レパードSの勝利騎手インタビューで「トップジョッキーの川田騎手との追い比べで、私自身もすごく興奮しました」と話していたように、お互いにリスペクトしあう相手。叩き合いに敗れた川田騎手も、レース後には笑顔で祝福していたほどである。

 ここまで6日間に計34鞍に騎乗して1割を超えた勝率も、馬質を考えると大健闘といっていい成績だろう。

 ノーザン系の馬の多くを人気以上の着順に持ってきており、期待の新馬なども勝たせているため、関係者からも「力のある馬を用意すればしっかりと結果を出してくれるし、ペース判断や馬を動かす能力に長けている」という声も出ているらしい。

 夏競馬の期間中ということもあり、秋の大舞台を目指す大物の騎乗依頼はないが、契約馬主の吉田勝己氏やホー騎手をバックアップするノーザンファーム関係者の評価は上がっている。

 実際、ノーザンファーム生産馬では、昨年4月に香港のクイーンエリザベス2世C(G1)で初騎乗のラヴズオンリーユーを勝利に導いてもいる。今回の来日で改めてその実力を証明しただけに、次回の来日では騎乗馬の質がさらに上がってくるはずだ。

 今週末を含めて騎乗予定は残り2週間。今後も要注目の存在となるだろう。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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