岩田康誠の好騎乗に潰された5年目23歳「期限なし」武者修行へ。活かせなかった「3つの幸運」人馬のサマー王者が霧散

西村淳也騎手

 11日、中山競馬場で行われた京成杯オータムH(G3)は、1番人気のファルコニア(牡5歳、栗東・高野友和厩舎)が勝利。これまで重賞で4度の3着がある素質馬が、待望の重賞初制覇を飾った。

「昨日から前、内を通った馬が好走しているので『スタートだけきれいに出そう』と思っていました」

 あと一歩勝ち切れない“善戦マン”に最後の一押しを与えたのが、吉田隼人騎手の好判断だ。舞台となった開幕週の中山は、例年通り前残りが多発。この2日間の傾向を見逃さずに活かしきった、鞍上のファインプレーだった。

 そんな中、ほろ苦い結果に終わったのが、4番人気のベレヌス(牡5歳、栗東・杉山晴紀厩舎)に騎乗した西村淳也騎手だ。

 吉田隼騎手が「内有利」を語る中、1枠1番という絶好枠を引いたベレヌス。勝てば逆転でサマーマイルシリーズ優勝という立場だけに「狙って、ここを目標に調整してきた」と語る杉山晴調教師ら陣営にとっても気合の入る一戦だった。

 スタート直前に異常が判明したシュリが馬体検査を行った結果、故障と判断されて除外に。前走の関屋記念(G3)を逃げて2着に粘ったライバルが消えたことで、前走の中京記念(G3)を逃げ切ったベレヌスに大きく“風”が吹いた。

 そんな追い風に乗るように好スタートを決めた西村淳騎手は迷わずハナへ。すんなり先頭に立って1コーナーに飛び込んだ際は、サマーマイルシリーズのタイトルが大きく近づいた瞬間だった。

若手騎手の希望を打ち砕いた48歳の大ベテラン

 しかし、5年目23歳の若手騎手の希望を打ち砕いたのは、48歳の大ベテランだ。

岩田康誠騎手 撮影:Ruriko.I

「外枠なので、思い切ったレースをしようと思った」と語った岩田康誠騎手は、スタート直後の1コーナーを回り終えてペースが落ち着いたところを外から強襲。あっという間にベレヌスのハナを叩くと、蓋をしてレースの主導権を奪うことに成功した。

 一気にハナに立った岩田康騎手は開幕週の馬場傾向を最大限活かし、最後はクビ差の接戦に。残念ながら一歩及ばなかったが、大胆不敵な騎乗で12番人気の伏兵ミッキーブリランテを2着に導いたパフォーマンスが称賛されたことは言うまでもない。

 レース後「色々とマッチしたね。楽に行ければ逃げ切れたけど……」と接戦2着の悔しさを露にした岩田康騎手は、勝ち星の数こそ息子の岩田望来騎手にお株を奪われているが、今年重賞5勝と大舞台の騎乗が光る。ベテランならではの読みが、秋競馬の開幕に波乱を呼び込んだ格好だ。

「4コーナーで4番手以内にいた馬たちが1~3着を独占した前残りのレース。いつもより前目の競馬を心掛けた吉田隼騎手や岩田康騎手の判断は見事でしたが、歯痒かったのがベレヌスの西村淳騎手ですね。

結果的に4番人気で5着とまずまずでしたが、今回は勝てばサマーマイルシリーズ優勝という一戦。開幕週の1枠1番という幸運に加えて、逃げ候補だったシュリが除外、いいスタートが切れて特に競り掛ける馬もおらず、すんなりハナに立てただけに『ここは決めたかった』というのが本音でしょう。

結果論になってしまいますが、2コーナーで岩田康騎手のミッキーブリランテが来た時に、もっと抵抗しても良かったかもしれません。まだコーナーの途中でしたし、内にいた分、有利でしたからね。

もちろん、そこで余計な脚を使ってしまうことで5着に粘れたかはわかりませんが、今回は勝利が求められた一戦。相手は大先輩でしたが、少し強引さを出してもよかったかもしれません」(競馬記者)

 この結果、今年のサマーマイルシリーズ優勝、そして賞金3000万円はシリーズ2勝を挙げたウインカーネリアンの関係者に。あと一歩で優勝を逃したベレヌスは、この日の京成杯AHを勝ったファルコニアにも交わされて総合3位だった。

「いいスタートが切れて状態も良かったです。勝ち馬とは差がなかったですし、よく頑張っています」

 レース後、西村淳騎手がそう語った通り、5着ながら勝ったファルコニアとはわずか0.2秒差。逆に言えば、前走のようにハナを取り切ってしまえば、結果は違ったかもしれない。

 明日からフランスへ武者修行に旅立つ西村淳騎手は先日、小倉の年間リーディングに輝いたばかり。間違いなく競馬界の将来を担うホープの1人だ。この日の京成杯AHを勝てば、馬だけでなく、自身もサマージョッキーズシリーズ優勝だった。

 今回の遠征期限を「未定」としている西村淳騎手。日本“最後”の騎乗は課題の残るレースだっただけに、一回り成長した姿を目にする日を楽しみにしたい。

関連記事

競馬最新記事

人気記事ランキング 5:30更新

競馬

総合

重賞レース特集
GJ編集部イチオシ記事
SNS