JRA川田将雅「6年」にわたる悲願成就へ王手! 波紋を呼んだ乗り替わりから約4か月…“雑音”を完全シャットアウト
雑音を「結果」で封じ込めた。
18日、中京競馬場で行われた秋華賞トライアル・ローズS(G2)は、1番人気に支持されたアートハウス(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)が勝利。春の二冠馬スターズオンアースが待つ秋華賞(G1)へ、その存在を大きくアピールした。
本番と同じ芝2000m、14頭立てのレース。ゲートを上手く出たアートハウスは、持ち前の加速力ですんなりと好位集団の一角へ。川田将雅騎手が「自然と取れたポジション」と振り返った4番手は、絶好の位置取りだった。
だが、主戦騎手が「そこで我慢できるように」と話した通り、ここからが本馬の課題だ。2番人気に支持された春のオークス(G1)では、道中で走りのバランスが崩れて最後は失速し7着。「調教から難しい面を露呈していた」という川田騎手の不安がレースでも出てしまった。
しかし、この日は「ある程度、改善できている」と理想的な道中。夏の成長を感じさせる走りで、最後は2着サリエラが上がり3ハロン最速となる33.7秒の末脚で追い込んできたが、「捕まることはない」と余裕があった。
「6年」にわたる悲願成就へ王手!
「今週末は台風が来ていることもあって天気が心配でしたが、良馬場で迎えられたことはアートハウス陣営にとっても幸いだったと思います。春の忘れな草賞(L)で見せた競馬も秀逸でしたが、この日はそれに近い走りができたのではないでしょうか。
本番の秋華賞は忘れな草賞と同じ阪神の芝2000mですし、持ち前の先行力がより活きる舞台。相手はさらに強くなりますが、春のリベンジを果たせるだけの舞台は整ったと思います」(競馬記者)
川田騎手にとってアートハウスと挑んだオークスの敗戦は、ただの一敗ではなかった。何故なら、このレースを勝って二冠馬となったスターズオンアースを桜花賞(G1)勝利に導いたのが、川田騎手本人だったからだ。
過去を遡っても、クラシック第1戦を制した馬が、異なるジョッキーで第2戦を迎えたケースはあまりない。例えば2012年に牝馬三冠を達成したジェンティルドンナのオークス制覇は川田騎手によるものだったが、主戦の岩田康誠騎手が騎乗停止中だったためだ。
しかし、川田騎手は桜花賞と同日に行われた忘れな草賞を勝利したアートハウスを選択。決断は大小様々な波紋を呼んだが、結果的にスターズオンアースはC.ルメール騎手との新コンビで二冠馬に輝き、アートハウスと川田騎手はG1の厚い壁に跳ね返された。
「アートハウスの母パールコードもかつては川田騎手が主戦を務めていましたが、2016年の秋華賞で2着するなど、あと一歩でG1タイトルに届きませんでした。川田騎手としては、そんな母の娘ということで、人一倍の思い入れがあるそうです。母娘とも、これまで二人三脚で様々な成功を重ねてきた中内田厩舎の管理馬という点も大きいと思います。
ただ、『結果』が大きくものを言うのが競馬の世界。オークスが終わった時点でスターズオンアースとアートハウスの明暗ははっきりと分かれましたし、競馬界の内外から川田騎手の選択に疑問符を付ける声もありました」(同)
実際に春のオークス直後には、ネット上の掲示板やSNSなどでは川田騎手の決断を「選択ミス」と揶揄する声もあった。もし、今回のローズSで1番人気を裏切っていれば、そういった“雑音”はますます大きくなっていただろう。
ローズSを経由した馬が秋華賞を勝ったのは2015年のミッキークイーンが最後だが「久々にローズS組優勢の秋華賞になる気がしてきた」とTwitterを通じて期待を寄せているのは、元JRA騎手の安藤勝己氏だ。
「本番は、さらにいい感じでいけるんじゃないかという感触を得ることができました。しっかりと準備をして二冠馬に胸を張って挑めるような状態で秋華賞を迎えたいなと思います」
打倒スターズオンアース、そして三冠阻止へ――。勝って兜の緒を締めた川田騎手。母の無念を晴らすとしたら、かつて0.1秒差で涙を飲んだ秋華賞を勝つことが最大の恩返しだ。母から娘へ、6年にわたる悲願成就にいよいよ王手が掛かった。