タイトルホルダーは「凱旋門賞離れ」の急先鋒!? 呪縛解放に一石投じる新しい選択肢
2日にフランスのパリロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞(仏G1)で11着に敗れていたタイトルホルダー(牡4、美浦・栗田徹厩舎)は、12月25日の有馬記念(G1)を目標に調整することを栗田師が明かした。
3年前はリスグラシュー、2年前はクロノジェネシスが達成した同一年春秋グランプリ制覇。今年タイトルホルダーが有馬記念を制すると、史上12頭目の快挙となる。
その一方、同馬のオーナーブリーダーである岡田スタッド代表・岡田牧雄氏が、ポッドキャスト番組『サンスポ音声局 しゃべる新聞』内で語った内容によると、有馬記念を使った後には、ドバイシーマクラシック、クイーンエリザベス2世C、ブリーダーズCターフなど、海外G1へ転戦するプランも視野に入れているとのこと。
「ずっとアメリカ競馬を目指すべきと考えていました。(来年の開催地で西海岸のサンタアニタは)輸送も楽だし、スピードも生きる馬場」と話していたように、欧州よりもアメリカの馬場に適性があると考えているようだ。
呪縛解放に一石投じる新しい選択肢
そしてこれは、長らく挑戦を続けてきた凱旋門賞制覇の呪縛から、日本競馬が解き放たれる契機となるのではないか。
過去、エルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、オルフェーヴルがあと一歩のところまで迫ったものの、欧州の層の厚さと日本と異なる馬場への適性に、多くの挑戦者が跳ね返されてきた。
関係者の間でも、もはや別競技にすら例えられるようになった舞台設定の克服は、これからも目を逸らせないテーマとなるだろう。時期的に悪天候で開催されるケースも少なくないため、経験したことのないタフな馬場コンディションを前に、能力を発揮できないまま帰国の途に就いた馬も多数いる。
かといって、アウェーの環境に慣れさせるにも、長期滞在を想定するコストなどを考えると、そう簡単なことではない。そもそもレコード更新が日常茶飯事の日本の馬場は、スピード重視の傾向が強く、こうした馬場の高速化も外国馬の参戦が遠ざかった一因という声もあるくらいだ。
それこそ凱旋門賞制覇に本気で取り組むなら、馬場や馬づくりから見直しが必要となる可能性すら出てくるだけに、一朝一夕の努力で叶うほどハードルは低くはないはずだ。
これに対し、欧州以外に目を向けた場合、香港やドバイは好結果を残しており、それら以外でも日本馬が大活躍したサウジカップデーやラヴズオンリーユーのブリーダーズCフィリー&メアターフ(米G1)優勝もある。
いつのまにか凱旋門賞制覇イコール日本競馬の悲願という風潮となってしまったが、世界的にも日本馬がトップクラスの実力を持っていることは間違いない。大局的に見れば、欧州競馬も世界中で行われている地域の一つに過ぎないのだから、わざわざ勝算の低いレースを狙わずに、適性の高い舞台を目標にする選択肢もあっていい。
勿論、逆境に立ち向かうチャレンジスピリットを尊重したい気持ちに変わりはないものの、そろそろ凱旋門賞離れをする時期に来ているかもしれない。