レイパパレ、ジェラルディーナ以上!? ピンハイも「幻の秋華賞馬」といえる理由
16日に行われた秋華賞(G1)はスタニングローズが勝利し、2着にナミュール、3着にスターズオンアースと上位人気3頭による堅い決着であった。春の実績馬たちが上がり馬たちを退け、力の違いをみせつけた恰好だ。
この3頭に一矢報いる馬が現れなかったことを考えると、悔やまれるのが春のクラシック戦線で存在感を放っていたピンハイ(牝3歳、栗東・田中克典厩舎)の出走が叶わなかったことではないだろうか。同馬は桜花賞(G1)、オークス(G1)共に13番人気の伏兵評価であったが、それぞれ5着、4着と好走を果たしていた。
下馬評を覆す春の好走から、秋へ向けての期待の声も多かったピンハイ。だが今年の秋華賞における賞金のボーダーラインは1500万円となっており、収得賞金が1450万円のピンハイはわずかに届かず。特別登録は行っていたものの抽選の対象となることなく、除外の憂き目に遭ってしまった。
そのピンハイは同日の阪神競馬場で、秋華賞の1つ前に行われる自己条件の西宮S(3勝クラス)へ回ることとなった。秋華賞の除外は陣営にとっても無念であったに違いないが、ピンハイはこの西宮Sで悔しさを振り払うような快走を見せることとなる。
9頭立ての後方3番手の位置でレースを進めると、最後の直線では外から脚を伸ばして先団を一気に抜き去りゴールイン。上がり3ハロンは33.0秒をマークし、驚異的な末脚で勝利を掴んで見せた。
この西宮Sの1800m走破時計は1分44秒3であり、これは直後の秋華賞における1800mの通過タイム1分46秒8よりも2.5秒も速いものであった。内・外周りのコース形態や展開など様々な条件が異なるため単純な比較は難しいが、この「2.5秒」の差は今後のピンハイの出世に向けて大きな好材料といえるかもしれない。
ピンハイも「幻の秋華賞馬」といえる理由
実は秋華賞直前の第10Rにおいて過去2年レイパパレ、ジェラルディーナといった3歳牝馬が勝利をしており、この2頭はそれぞれピンハイ同様に秋華賞を除外になった馬であった。
レイパパレの勝利した大原S(3勝クラス)は京都1800m、ジェラルディーナが勝利した西宮Sは阪神1800mで行われていたのだが、この2レースの勝ちタイムは直後の秋華賞の1800m通過タイムと比較すると、それぞれ2.2秒速いものであった。
この単純な時計だけの比較で言えば、2頭が仮に同じペースを秋華賞で刻んでいた場合に最後の1ハロンで2.2秒もの差を後続につけていたことになる。各種条件の違いがあるため、あくまで参考に過ぎないが、こうした時計を見る限りでは秋華賞の舞台でも2頭が好勝負した可能性があった。
こうした経緯からレイパパレ、ジェラルディーナの2頭が勝利した際は、それぞれ「幻の秋華賞馬」と呼ぶ声も挙がっていた。果たして2頭が本当にデアリングタクトやアカイトリノムスメを撃破できていたかは定かではないが、そんな期待を抱かせるだけの快走を秋華賞直前の第10Rで見せていたことは間違いない。
その後、レイパパレは大阪杯(G1)を制覇し、ジェラルディーナも先日のオールカマー(G2)で待望の重賞初制覇を果たした。2頭はそれぞれ重賞戦線で活躍を果たしており、「幻の秋華賞馬」と謳われた実力が紛い物ではないことを示している。
今年の西宮Sを果たしたピンハイは、この2頭の「幻の秋華賞馬」を上回る2.5秒もの差を秋華賞の1800m通過タイムとの間につけていた。このタイム差を踏まえれば、ピンハイにも重賞戦線で通用するだけのポテンシャルが秘められているといえるはずだ。
今回の勝利でオープン昇格を果たしたピンハイ、今後は重賞レースで秋華賞に出走した面々と激突することも考えられる。「もし秋華賞に出ていれば……」後にそう語られるような活躍を期待したい。