天皇賞・秋「ウマ娘」新加入ヤマニンゼファーの「地味」な名勝負だった93年

 先日、Twitterでトレンド入りし、オールドファンを驚かせたヤマニンゼファー。4月の時点で事前に告知されていたのだが、人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」(Cygames)にヤマニンゼファーが実装されたことで、ユーザーの間で話題に上ったようだ。

 G1・3勝を挙げた名馬ではあるが、ストーリーで絡みのあるニシノフラワーやサクラバクシンオーと違って少々地味な印象がある。個人的な感想ではあるが、現役当時も「めちゃめちゃ強い」というイメージはなく、気がつくと勝ち星をもぎ取っていたという印象が拭えない。

 そんなヤマニンゼファーだが、1993年の天皇賞・秋(G1)では、名勝負と呼べる接戦を演じている。

 ヤマニンゼファーは父・ニホンピロウイナー、母・ヤマニンポリシー(母父・Blushing Groom)という血統で、父はマイルCS(G1)を連覇した以外にも、安田記念(G1)勝ちなど短距離重賞で活躍した。ヤマニンゼファーも血統面を意識したのか、デビュー戦と500万下(現1勝クラス)をダート1200mで戦い、連勝している。デビューが4歳(現3歳)3月と遅かったのでクラシックには間に合わず、3戦目はクリスタルC(現ファルコンS・G3)に駒を進め、3着に入った。

 4歳暮れに最初のG1チャレンジとなったスプリンターズS(G1)へ出走、900万下(現2勝クラス)を勝ったばかりの馬が通用するわけもなく7着に沈んでいる。

明け5歳(現4歳)から突然覚醒し初重賞が初G1制覇

 明け5歳(現4歳)から突然覚醒したかのような強さを見せて、この年の安田記念を11番人気の人気薄で勝利し、初重賞が初G1制覇、かつ当時4年目の田中勝春騎手の初G1制覇もプレゼントした。

 だが、この年はこの後マイルCSを5着、2度目のスプリンターズSを2着と勝ち星を残せずに終わった。

 6歳(現5歳)シーズンは田原成貴騎手に乗り替わってマイラーズC(G2)から始動するも2着。続く中山記念(G2)を4着と結果が出せなかった。さらにここで柴田善臣騎手へ乗り替わり、京王杯SC(G2)を勝つとそのまま2度目の安田記念も連勝。田中騎手に続いて柴田善騎手にも初G1をプレゼントした。

 安田記念で春シーズンを終えると、秋は毎日王冠(G2)から始動。2番人気に推されるが6着に敗れている。ここを敗れ、春の中山記念敗退もあってヤマニンゼファーには血統から見ても距離の壁があるとされ、天皇賞・秋は距離が長過ぎるのではないか、というのが戦前の評判だった。

 奇しくも2年前、世紀の大斜行で天皇賞・秋を1着入線18着降着という屈辱を味わったメジロマックイーンがその雪辱を果たすべく調整を続けられていたが、本番4日前に繋靱帯炎を発症し、引退に追い込まれた。毎日王冠を勝ったシンコウラブリイは当時外国産馬に天皇賞の出走権がなかったこともあり、混戦模様となった。

 迎えた天皇賞・秋の1番人気は天皇賞春秋連覇を狙うライスシャワー、2番人気はG1制覇を目指すナイスネイチャ、3番人気は今でも語り草になっているオールカマー(当時G3)での逃げ切りを演じたツインターボで、ヤマニンゼファーはG1 2勝馬ながら前述の距離不安もあって5番人気に甘んじた。

 レースは当然のようにツインターボが行き脚良く大逃げを打ち、ヤマニンゼファーは3番手、その後ろに本命のライスシャワーがつける展開。3コーナー過ぎからヤマニンゼファーが動き出し、連れてライスシャワーが追走。直線でツインターボを捕まえると伸びてこないライスシャワーを尻目にヤマニンゼファーが抜け出す。だが、残り200mを切ったところで猛然と追い込んできたセキテイリュウオーと馬体を併せた叩き合いとなり、並んでゴール。

 結果はハナ差でヤマニンゼファーが勝利していた。セキテイリュウオーに騎乗していたのは前年の主戦だった田中騎手。ヤマニンゼファーを理解していながらも、ライバルとなって改めてしぶとさを感じたことだろう。

 勝ったヤマニンゼファーが地味ならハナ差で負けたセキテイリュウオーも地味なので、同じハナ差勝負となったダイワスカーレットとウオッカのように華のある名勝負として語られることはないが、見応えのある一戦だったことは間違いない。

 今年もそんな名勝負が生まれるのか、レース当日を楽しみに待ちたい。

ゴースト柴田

競馬歴30年超のアラフィフおやじ。自分の中では90年代で時間が止まっている
かのような名馬・怪物大好きな競馬懐古主義人間。ミスターシービーの菊花賞、マティリアルのスプリングS、ヒシアマソンのクリスタルCなど絶対届かない位置からの追い込みを見て未だに感激できるめでたい頭の持ち主。

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