ウオッカとダイワスカーレットの死闘から14年…“期待外れ”の産駒に大物誕生!?
「ウオッカか!ダイワスカーレットか!大接戦のゴール前……」
10分以上に及ぶ写真判定に持ち込まれた2008年の天皇賞・秋(G1)。4歳牝馬2頭によるゴール前のデッドヒートを制したのは前年のダービー馬ウオッカだった。
伝説の死闘から14年、ウオッカは3年前に蹄葉炎のため繋養先のヨーロッパで天国へと旅立った。一方、ハナ差の2着に敗れたダイワスカーレットは今も生まれ故郷の社台ファームで繁殖牝馬として頑張っている。
現役時代の実績から、ともに繁殖入り後は大物産駒の誕生が期待された。ところが、ウオッカは小倉大賞典(G3)で2着したタニノフランケルを出したが、ダイワスカーレットはこれまで重賞ウイナーどころか、オープン馬すら出せていない。
ただし、ダイワスカーレットは繁殖牝馬として仔出しが非常に良く、これまで11頭を出産。初仔から10頭連続で牝駒だったことも話題になった。ちなみに、ようやく生まれた初の牡馬はロードカナロア産駒の1歳馬である。
産駒のほとんどが牝馬ということもあり、ダイワスカーレットの孫がじわじわと増加中。孫世代の馬たちも最初は競走馬として苦戦していたが、今年に入ってからは一転、活躍が目立っているという。
「ダイワスカーレットの孫世代は、昨年までJRAで26戦0勝とサッパリでした。ところが今年はこれまで5頭が走り、『4-3-0-8』の好成績を残しています。4勝のうち3勝を挙げているのが、(ダイワスカーレットの3番仔)ダイワミランダ産駒のエイカイマッケンロとディナトセレーネです。
このうち妹のディナトセレーネが今週土曜のアルテミスS(G3)に出走を予定しています。母のダイワミランダもオークストライアル(スイートピーS)で2番人気に支持された期待馬でしたが、結局500万下クラス(1勝クラス)で現役を終えたので、ディナトセレーネの奮起に期待したいですね」(競馬誌ライター)
“期待外れ”の産駒に大物誕生!?
ダイワミランダの2番仔にあたるディナトセレーネ(牝2歳、美浦・尾関知人厩舎)は、父が新種牡馬のレッドファルクス。父とそっくりな芦毛の馬体が特徴で、夏の新潟デビュー戦(芝1400m)こそ4着に敗れたが、このとき鞍上を務めたM.デムーロ騎手は「能力的には一番強かった」と高く評価していた。
一息入れて秋の中山2歳未勝利戦(芝1600m)に出走すると、うまく距離延長と不良馬場に対応。ズブさを見せた初戦から一変し、反応良く好位から抜け出すと、最後は後続に2馬身半差をつけて初勝利を挙げた。
そして迎える3戦目は、リバティアイランドを筆頭に強敵が揃ったアルテミスS。26日現在、『netkeiba.com』の予想オッズで単勝7番人気と、ディナトセレーネへの評価はあくまでも伏兵扱いだ。
ただ、競馬界には「隔世遺伝」という言葉もあるように、名馬・名牝の孫世代から大物が誕生することも珍しくない。“ダイワスカーレット一族”が天皇賞・秋前日に反撃の口火を切る可能性は十分あるだろう。
14年前に死闘を繰り広げたウオッカとダイワスカーレットの繁殖牝馬としての対決は期待外れに終わりそうだが、今後も続くことになる子孫の争いでダイワスカーレットが一歩リードすることはできるか。
今年のアルテミスSは、ディナトセレーネの走りに注目したい。