スタニングローズは危険な人気馬!? 昨年のアカイトリノムスメと重なる2つの不安
13日、阪神競馬場ではエリザベス女王杯(G1)が行われる。下半期の牝馬の頂点を決める戦いと位置付けられる同レースは、3歳牝馬と古馬が初めて激突するG1タイトルでもある。今年も世代を超越した牝馬最強の座を掴むべく、錚々たるメンバーが揃った印象だ。
古馬の筆頭としては一昨年の無敗三冠牝馬・デアリングタクトの名前が挙がるが、そこに挑む新進気鋭の3歳馬たちも今年は精鋭が数多く参戦している。中でも最大の注目は秋華賞馬・スタニングローズ(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)だ。
春にオークス(G1)で2着に敗れた悔しさを晴らすかの如く、秋華賞(G1)ではスターズオンアースの三冠達成を見事に阻止して見せた。今回はかつての三冠牝馬を相手に更なる“大物食い”を成し遂げて世代交代を印象付けられるか、その走りには大きな期待が寄せられている。
だが近年の同レースの結果を振り返ると、スタニングローズの好走には一抹の不安も見え隠れする。
スタニングローズは危険な人気馬!?
エリザベス女王杯は京都競馬場で本来は行われるレースだが、同競馬場が改修工事を行っている影響で近2年は阪神競馬場で行われている。その2年間の出走馬たちの初角での位置取りに注目すると、10番手以内の前方でレースを進めた馬が(0-1-0-19)と散々な結果に終わっている。それとは対照的に初角11番手以下に位置を取った馬は(2-1-2-10)と好成績を収めているのである。
初角10番手以内から唯一馬券に絡んだのは昨年のステラリアだが、この馬は初角7番手からレースを進め、4角ではややポジションを落として9番手に後退している。そこから末脚を伸ばして馬券内に食い込んだことを踏まえれば、実質的には差しの戦法を取っていたと捉えられる。
こうした結果を見ると、近2年の阪神開催のエリザベス女王杯では先行勢よりも差し・追込を得意とする馬に分があると言えるだろう。
こうした傾向が表れている要因の一つとしては、京都・阪神のコース形態によるレースラップの変化が挙げられる。阪神開催となった近2年のエリザベス女王杯は、いずれも1000m通過が59秒台前半という淀みない流れでレースが進んでいる。一方でそれ以前の京都開催のレースを見ると、近10年で最も速いペースだった2014年でも1000m通過は60.3、多くの年は61秒~62秒台のスローペースとなっている。
このような阪神開催ならではの傾向に加えて、今年はレースの展開を握る存在としてローザノワールが出走する。
同馬を管理する西園正都師は「矢作厩舎のパンサラッサみたいにビュンビュン行って、どこまでやれるか」と“大逃げ”に含みを持たせている点も気になるところだ。この発言を踏まえても今年のエリザベス女王杯は近年同様の速い流れが予想されるだけに、好位から押し切るスタイルのスタニングローズには厳しい展開が待っているかもしれない。
スタニングローズに漂う不穏な空気は、こうした展開に関する面だけではない。
近5年のエリザベス女王杯では、秋華賞から転戦してきた3歳馬が13頭出走しているが、このうち馬券圏内に好走したのは昨年2着のステラリアと17年1着のモズカッチャンのみ。19年のクロノジェネシスや、昨年のアカイトリノムスメといった秋華賞を制した馬も、人気を裏切る結果に終わっている。
多くの3歳牝馬にとって秋の大目標は秋華賞であり、そこに照準を合わせた仕上げを施している。そこから中3週で古馬との戦いに挑み、再び好走を果たすことは簡単なことではない。
ましてスタニングローズに関しては秋初戦として紫苑S(G3)を使っている。場合によっては、こうした部分がエリザベス女王杯での走りに影響を及ぼしてくるかもしれない。
近年の傾向を分析すると、展開とローテーションの2つの部分に懸念が浮かび上がるスタニングローズ。思い返せば昨年に惨敗を喫したアカイトリノムスメも、秋華賞馬である点に加えて先行脚質である点がスタニングローズと共通している。仮に今年もタフで先行勢に厳しい展開となれば、スタニングローズが昨年の“二の舞”となる可能性もあるかもしれない。