ダノンスコーピオンやシュネルマイスターも涙…NHKマイルCは「敗者」に妙味あり?
先週のマイルCS(G1)は、セリフォス(牡3、栗東・中内田充正厩舎)が勝利。これまでG1では惜敗が続いていたものの、秋の大一番で初の栄冠を掴み取った。
6番人気と評価はさほど高くなかったが、最後の直線を迎えた際には唸るような手応え。鞍上のD.レーン騎手も「最高の脚を見せてくれました」と振り返った通り、大外から上がり最速の末脚を繰り出してライバルたちを差し切った。
春のNHKマイルC(G1)では1番人気に推されながら、ダノンスコーピオンの4着に屈したセリフォス。秋のG1で再び2頭が相まみえるとあって、3歳馬同士の対決にも注目が集まっていた。
ただ、両馬は2歳時の朝日杯フューチュリティS(G1)でもセリフォスが先着していたように、前走の富士S(G2)に続く連勝で直接対決はセリフォスの3勝1敗。ライバルのダノンスコーピオンが11着と大敗したことからも、力関係はより明確になったか。
ダノンスコーピオンの敗戦に限らず、近年のNHKマイルC覇者はその後にG1を制するケースの少なさもまた目立ちつつある。
一昔前のNHKマイルC覇者は実に大物が多かった。ジャパンC(G1)を制して凱旋門賞(G1)で2着したエルコンドルパサー、ジャパンCダート(G1)を圧勝したクロフネ、日本ダービー(G1)との変則2冠を達成したキングカメハメハなど、現役最強クラスの名馬を数多く輩出した。
だが、近年はあの頃ほどの大物は現れていない印象がある。ダービー馬となった2008年の覇者ディープスカイを最後に、ここ14年の勝ち馬で再度JRAのG1を制したのは、マイルCSを勝ったミッキーアイルのみと寂しい結果になっている。
まだ今回のダノンスコーピオンは、NHKマイルC後初のG1だったにせよ、前年の覇者シュネルマイスターは昨年(2着)に続き5着と再び涙を呑んだ。これまでドバイターフ(G1)、安田記念(G1)、スプリンターズS(G1)と何度かチャンスがありながら、二つ目のG1奪取に苦戦が続いている状況だ。
NHKマイルCは「敗者」に妙味あり?
その一方で、近年はNHKマイルCを僅差で敗れた馬の方が、その後にG1を勝利するケースが顕著となっている。
今回のセリフォスをはじめ、マイルCS連覇などG1を6勝したグランアレグリア、天皇賞・春(G1)を制したレインボーライン、高松宮記念(G1)を勝ったミスターメロディ、安田記念(G1)を勝ったリアルインパクトやソングラインなど、NHKマイルC で5着以内に敗れた馬の中からG1馬が多数誕生している。
無論、負けた馬の方が確実に多いわけだが、それでも勝ち馬の多くがのちに苦戦を強いられているとなると、3歳春の完成度が将来的な結果にも必ず結びついているとは言い難い。
そういった意味では、マイルCS で10着に敗れたマテンロウオリオンをはじめ、カワキタレブリー、インダストリアなど今年のNHKマイルCを5着内に走った馬の中にも、のちのG1馬が隠れているかもしれない。