JRA「G1級」スキルヴィングがヤバ過ぎる!? イクイノックス2世にダービー馬の予感も…「超大物候補」を一蹴した怪物の強さを福永祐一が証明

C.ルメール騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末に東京競馬場で行われたゆりかもめ賞(1勝クラス)を圧勝したスキルヴィング(牡3、美浦・木村哲也厩舎)。キャロットファームが所有するキタサンブラック産駒のクラシック候補は、昨年の年度代表馬イクイノックスと父も同じなら主戦のC.ルメール騎手も同じという木村厩舎の期待馬である。もし順調に勝ち進めば、イクイノックス2世という評判にも違わない活躍が見られるかもしれない。

 実際、そう思わせるだけの走りを証明したのが、先述のゆりかもめ賞だ。

 10頭立てで争われた芝2400mのレース。スタートで後手を踏んだスキルヴィングは、後方2番手からの追走を余儀なくされたが、最後の直線を迎えると楽な手応えでポジションを上げていく。鞍上のゴーサインが出されると一気に加速し、残り200mで先頭に立つと後続の追撃を寄せ付けずにゴール。まだまだ余力を残した圧勝劇を演じた。

「長く脚を使って、良い加速でした。スタミナがあり、能力もあります。キタサンブラック産駒ですから、伸び代もあります。楽しみですね」

 これには手綱を取ったルメール騎手も“褒め殺し”のような称賛。管理する木村調教師も「スタートについては修正していますが、まだこれからの課題です」としつつも、「その空白部分を埋めながら、一つ一つ段階を上げていきたいと思います」と好感触を掴んだ様子だ。またネットの掲示板やSNSなどでも「ヤバ過ぎる」「強いなあこの馬」といった声が上がった。

 しかも楽勝した舞台は日本ダービー(G1)と同じ東京の芝2400m。また2分24秒8(良)の勝ちタイムも前日土曜に行われた古馬3勝クラス・早春Sの2分25秒4(良)を0秒6も上回っていたのだから、2月初旬という時期を考えれば重賞級、もしかしたらG1級といえる好内容である。4月中旬の皐月賞(G1)は迫りつつあるが、5月下旬のダービーなら時間的にもまだ余裕があるだろう。

 その一方で気になったのは、そんな実力の持ち主がデビュー戦で黒星を喫していたことだ。500キロを超える雄大な馬格だけに、まだ仕上がりに余裕があったと推察されるとはいえ、レース映像を確認したところ、後方から凄まじい切れ味でスキルヴィングを差し切った馬がいたのだ。

「超大物候補」を一蹴した怪物の強さを福永祐一が証明

福永祐一騎手 撮影:Ruriko.I

 その馬の名はヒシタイカン(牡3、美浦・堀宣行厩舎)。モーリス産駒で馬体は430キロ台でスキルヴィングとは90キロほど差があるのだが、ゴール前で見せた切れには大物感たっぷりだった。

 特筆すべきは、先に抜け出したスキルヴィングが比較的スムーズに最後の直線を迎えたのに対し、ヒシタイカンは馬群に包まれた状態で追い出しが遅れる致命的な不利を受けていたことである。

 スキルヴィングと3着馬エエヤンの2頭で大勢が決まったように見えたのだが、残り300mあたりでようやく外に持ち出されたヒシタイカンは、まるで他の馬が止まって見えるカミソリのような切れ味。騎乗していた福永祐一騎手としては、「やってしまった」と思われても仕方のない位置ながら、完全に馬の力だけで跳ね返してしまった。

 この勝利を「距離の融通性がありそうですし、楽しみな馬です」と振り返った福永騎手も、2月で引退しなければダービーで騎乗する未来もあっただろう。

 敗れたスキルヴィングのルメール騎手は「まだ緩いところがあります。長い距離の方が良いですが、良い馬です」と前向きなコメントを残していた通り、次走の未勝利戦を楽勝し、続くゆりかもめ賞で連勝を決めた。

 両馬の直接対決は1度のみであり、2度目の対決が実現するかどうかは不明だが、ヒシタイカンには、クラシックで期待したくなる二冠馬ベガの血も流れている。母父にステイゴールドの名もあれば、近親にアドマイヤベガやアドマイヤドンの兄弟にハープスターといった大物がズラリ。ソングラインやディアドラが近親にいる良血スキルヴィングにも引けを取らない顔触れが揃っている。

 まだまだ混迷している今年のクラシック戦線だが、ゆくゆくはこういった遅れてきた大物候補が勢力図を一変させるかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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