JRA「誤解を招く可能性がある」G1勝っても騎手が乗り替わりも…オーナーの変わらぬ信頼とオジュウチョウサンがもたらした新たな出逢い

ニシノデイジー

 ニシノ・セイウンの冠名でお馴染みの西山茂行オーナー。大ヒットアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)にニシノフラワーやセイウンスカイがゲーム内のキャラクターとして登場しているだけでなく、オーナー自身もSNSで情報を発信している競馬界の大物の1人だ。

 所有馬やプライベートの情報を発信するTwitterも好評を博しており、そのフォロワー数も5万人が視野に入るほど大人気(9日現在で約4万8000人)。ユーモアあふれるツイート内容で関係者やファンの注目を集めている。

 だが、8日夜に発信された内容に含まれた『ニシノデイジー乗り替わりになります』という一文は、ひと際目を引いた。

 ニシノデイジーといえば、2018年の東京スポーツ杯2歳S(G3・当時)を制した実力馬であり、昨年暮れに平地から障害に転じた4戦目の中山大障害(J・G1)で待望の初G1勝利を手に入れたばかりである。

 本馬の主戦は障害の4戦すべてで手綱を任されてきた五十嵐雄祐騎手だが、最高峰のレースで結果を残した騎手が乗り替わるというのだから穏やかではない。両者の間に一体何が起きたのだろうかと、ファンからトラブルを心配する声が出たのも当然だろう。

 しかし、こちらについてはファンサービスに定評のある西山オーナーだけに、自身のブログにて裏事情を説明してくれているため、興味のある方は『西山茂行オフィシャルブログ』にて詳細をご確認いただきたい。

 本サイトでも非常にお世話になっている方のため、今回は一部のみ抜粋する形でその一部を紹介したいと思う。

『ニシノデイジー中山大障害優勝祝賀会』の舞台裏…

 中山大障害を優勝したニシノデイジーは、今年の初戦に3月11日に阪神競馬場で行われる阪神スプリングジャンプ(J・G2)を目標に調整中とのことだが、騎手が乗り替わっての参戦となる。そこで「ここはわしからきちんと舞台裏を書いておかないと、各方面に誤解を招く可能性があるので、書き記しておきたいと思います」として、昨年末に忘年会と兼ねて開催された『ニシノデイジー中山大障害優勝祝賀会』の舞台裏が記されている。

 陣営としては、4月15日に中山競馬場で行われる中山グランドジャンプ(J・G1)の前に阪神スプリングジャンプに使うプランを予定していたようだが、五十嵐雄騎手から同じレースに出走を予定しているミッキーメテオの先約があるため、騎乗が出来ないという悩みを聞かされたようだ。

 これに対し、西山オーナーからは「まだ時間があるし、ゆっくり考えろよ。義理だの、先約があるだのより、自分が乗りたい馬に乗れよ。わしには気を使うな」と五十嵐騎手の意思を優先。一旦保留となったが、8日に「申しわけありません。先約を優先したいと思います」と断りの連絡が入ったらしい。

「五十嵐も辛い決断だったのだろう。言葉に気持ちが滲み出ていた」と主戦の心情を慮った西山オーナーだが、そうなると誰に乗ってもらうかという話が避けられない。

 ところが、ニシノデイジーを管理する高木登調教師から意外な人物の名前が候補に挙がった。なんとオジュウチョウサンの主戦だった石神深一騎手だという。何しろ障害の絶対王者として君臨していた同馬を倒し、世代交代を遂げたのがニシノデイジー。その愛馬の新たな鞍上にオジュウチョウサンの引退で空いていた石神騎手が騎乗するのだから、それはそれでドラマチックな話といえよう。

 勿論、西山オーナーの五十嵐騎手への信頼は厚く、阪神スプリングジャンプでニシノデイジーの調教を依頼すると同騎手も快諾。西山オーナーも「なんかこの件でわしと五十嵐騎手の距離がさらに縮まった気がする」と両者の絆が深まったことを述べて締めくくった。

 事情を知らない人間から「降ろしたように思われては困る」という意味でも、大きな意味を持つ今回の投稿。こういった配慮も西山オーナーがファンに支持されている理由のひとつなのかもしれない。

 ライバルのミッキーメテオも近2走を圧倒的な強さで連勝している実力馬であり、同馬の目標もおそらく中山グランドジャンプが濃厚だろう。自身が次走に進言したレースへ主戦のニシノデイジーも使われることに、五十嵐騎手も悩みに悩んだはず。

 ニシノデイジーとミッキーメテオ、そして五十嵐騎手と石神騎手。目標となる中山グランドジャンプでどのような組み合わせとなるのかにも注目したいところだ。

※参照元『西山茂行オフィシャルブログ 西山牧場オーナーの(笑)気分

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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