JRA京都記念(G2)武豊×ドウデュースはキズナかマカヒキか、それとも…重くのしかかる凱旋門賞挑戦の傷跡

ドウデュース 競馬つらつらより

 来週にフェブラリーS(G1)を控え、今週は3つの重賞が行われる。クラシックを目指す2億7000万円馬ダノンザタイガーら注目馬が出走する共同通信杯(G3)。桜花賞(G1)やオークス(G1)を目指す牝馬が出走するクイーンC(G3)。注目のG1ホース3頭が激突する京都記念(G2)だ。

 特に注目を集めるのは、やはりG2の京都記念だろう。

 昨年のダービー馬で武豊騎手が鞍上のドウデュースは、凱旋門賞(仏G1)が残念な結果だったとはいえ、2022年のJRA年度代表馬イクイノックスを負かした馬だけに、ここで無様な競馬はできまい。さらに2021年のJRA年度代表馬で復活を期すエフフォーリア、2021年ホープフルS(G1)を制し、前走の中日新聞杯(G3)で復活の勝利を成し遂げたキラーアビリティと一流馬が揃った。

 これらの有力馬は春の大阪杯(G1)やドバイ遠征が勝負なので、ここはあくまでも叩き台のレース。陣営にはさまざまな思惑はあるだろうが、宝塚記念(G1)やジャパンC(G1)で再戦する可能性もあるだけに、ここは負けられない一戦といえるだろう。

 その上でドウデュースは凱旋門賞の大敗(19着)から復帰初戦であり、さまざまな意味で重要なレースになる。

重くのしかかる凱旋門賞挑戦の傷跡

 というのも3歳でヨーロッパに遠征した場合、その多くがその後に結果を出せていないからだ。中でも、日本ダービー(G1)を勝利した馬には厳しい現実が待っている。フランスで前哨戦に出走し、そのまま滞在して凱旋門賞に挑戦したドウデュースと同じパターンは、2013年のキズナと2016年のマカヒキ。だがこの2頭の帰国後はG1未勝利だけでなく、G2を2勝しかできていないのだ。

 2013年のダービー馬キズナは、日本ダービー勝利後にフランスへ渡り、ニエル賞(仏G2)1着と結果を出すも、凱旋門賞は惜しくも4着に敗退した。その後、復帰初戦の大阪杯(当時G2)を快勝したものの、次走の天皇賞・春(G1)は断然人気で4着。鞍上の武豊騎手はレース後に「ギアがもう1段あるのですけど、それが出なかった」と語っている。その後骨折が判明したが、少なからず海外遠征の影響があったのかもしれない。怪我からの復帰後は3戦未勝利と勝ちきれず、また右前脚に屈腱炎を発症して引退している。

 2016年の日本ダービー馬マカヒキは、川田将雅騎手を背に日本ダービーを制した後、キズナ同様にフランスへ渡りニエル賞1着、満を持して凱旋門賞に出走するも14着に大敗した。そして国内復帰戦となった2017年京都記念で1番人気3着に敗れると、そのまま16連敗を喫し、およそ5年間も未勝利。2021年に京都大賞典(G2)を勝利するも、その後4戦連続2桁着順で引退となった。

 この2頭に共通しているのは、日本ダービー勝利後にフランスに渡り、前哨戦のニエル賞と凱旋門賞を2戦していること。そして国内復帰戦は、翌年のG2ということになる。また日本ダービー勝利までの成績と、凱旋門賞後の成績を比較すればその差は歴然。やはり日本ダービーを制するような完成度の高い3歳馬による凱旋門賞遠征は、馬の成長や性質を変えるほどの影響があったのではないかと考えられる。

 ではドウデュースはどうだろうか。

 日本ダービーの勝ち時計2分21秒9は、キズナやマカヒキの記録を大きく上回るレコードタイム。皐月賞(G1)は敗退したが、日本ダービーの成績だけを見れば歴代でもトップクラス。しかしフランス遠征後の成績は散々だ。ニエル賞は7頭立てで4着、凱旋門賞は20頭立て19着のブービーである。

 そもそも当初は出走を表明していたジャパンC(G1)を疲労で回避しており、次走は3月のドバイ遠征が決定済み。優勝賞金6200万円でG2でしかない京都記念よりも、優勝賞金およそ4億円でG1のドバイターフの方が重要なのは明らか。さらに再度の海外遠征を考慮すると、この京都記念に全力投球とはとても考えられない。

 しかし歴史は新たに作られるもの。ドウデュースには、この秋予定されている凱旋門賞に向け、すべての不安を吹き飛ばすような走りを見せてもらいたい。

仙谷コウタ

初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。

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