『ABEMA』大フィーバーから3カ月…『ウマ娘』オーナーが再び目指す“W杯”の舞台
25日(土)、サウジアラビアでは賞金総額2000万ドルを誇る世界最高賞金のドリームレース・サウジカップ(G1)が行われる。
当日は“サウジカップデー”として、芝・ダートの様々な条件でビッグレースが開催される予定となっており、今年は各レースに日本から多くの有力馬が参戦。馬券販売がないのがもったいないほどのラインナップとなった。
その中で今回取り上げたいのが、当日の6Rに行われるサウジダービー(G3)だ。
キングアブドゥルアジーズ競馬場のダート1600mを舞台に、各国の将来を担う若き3歳馬たちが激突。昨年はセキフウが2着、続く3着にはコンシリエーレが入るなど、日本馬も健闘を見せている。
『ウマ娘』オーナーが再び目指す“W杯”の舞台
今回、このサウジダービーで“海外重賞初挑戦”を迎えるホースマンがいる。『ウマ娘』オーナーとして、すっかりお馴染みの藤田晋氏だ。
株式会社サイバーエージェントの代表取締役社長として知られる藤田氏は、2021年にJRAの馬主としてデビュー。セールでの“爆買い”も話題になっていたが、2022年の4月には所有馬のジャングロがニュージーランドT(G2)を制覇。運と実力を兼ね備えた“持ってる男”として、競馬サークルでも注目を浴びた。
そんな藤田氏が、今度はデビュー2世代目にして世界に挑戦。新たに夢を託す愛馬がフロムダスク(牡3歳、栗東・森秀行厩舎)である。
同馬は2022年3月にアメリカで行われたトレーニングセール『OBSマーチセール』にて、管理する森調教師が90万ドル(現在のレートで約1億2000万円)で落札した外国産馬。後に「馬主:藤田晋」でJRAに登録、そのまま森厩舎に入厩した。
昨年9月に小倉・芝1200mで行われた新馬戦では、単勝1.9倍の支持に応えて快勝。期待に違わぬ形でキャリアのスタートを切ると、大敗を経て臨んだ3戦目の京王杯2歳S(G2)では11番人気ながら2着と激走。そのポテンシャルの高さを見せつけている。
そこから挑戦した朝日杯FS(G1)では16着と大敗を喫したが、年明け初戦のクロッカスS(L)では3着と立て直した姿を見せ、招待を受けていたサウジダービー参戦を決断。初の海外挑戦に臨む。
これまでのキャリアを振り返ると【1-1-1-2/5】で勝ち鞍は「新馬戦」。しかもこの5戦はすべて芝のレースであり、今回は初めての海外挑戦に加えて初めてのダート戦ということになる。
日本から参戦するライバルを見ても、全日本2歳優駿(G1)を制したデルマソトガケを筆頭に、カトレアS(OP)の勝利があるコンティノアール、もう1頭のエコロアレスもオープン勝ちこそないが2歳のうちに1勝クラスを突破しており、ダートの舞台ですでに複数回の勝利を挙げている有望株が相手となる。
このメンバーに加えて、海外の強豪たちとも初めての条件下で戦わなければならないのは酷にも思えるが、もちろん無謀な挑戦に行くわけではない。挑戦するだけの下地があると見込んでいるからこそ、今回の決断に至ったはずだ。
というのも、フロムダスクの父であるボルトドーロは2歳時にダートのG1競走で2勝を挙げ、3歳時にはサンタアニタダービー(G1)でも2着に入った実力馬。その時の勝ち馬が後の無敗の三冠馬・ジャスティファイだから、2着でもその価値は小さくはない。
さらにそのボルトドーロの父は、ダートのG1計3勝に加え、世界最高峰のブリーダーズカップ・クラシック(G1)で2年連続の2着、さらにはドバイワールドカップ(G1)でも2着に入った実績を持つ名馬・メダグリアドーロだ。この血統背景を見れば、フロムダスクにとっては満を持してのダート転向と見ることもできるだろう。
もしこの大舞台で一発回答を成し遂げることになれば、この後は3月のドバイワールドカップデーに行われるUAEダービー(G2)にも予備登録があり、さらにはアメリカ三冠競走の予備登録も済んでいる。世界制覇へ、夢は膨らむ一方だ。
馬主の藤田氏と言えば、自身が社長を務めるインターネットTVプラットフォーム『ABEMA』が絶好調。その名を世間に知らしめたのが、昨年11月にカタールで開催された「FIFA ワールドカップ カタール2022」で全64試合無料生中継という一大プロジェクトに挑み、これが見事に大成功。日本中に熱狂をもたらした。
記憶に新しいW杯フィーバーから3カ月。今度は社長ではなく馬主として、カタールの次はドバイの“ワールドカップ”を目指して。まずは今回のサウジダービーで、その存在を世界にアピールしたい。