苦境の武豊が『この馬の背中は渡したくない』女傑ウオッカによるマイルG1史上最大着差の圧勝劇
デビュー当初から鞍上は一貫して四位洋文騎手が担っていたのだが、4歳を迎えた初戦の京都記念を6着に負けた後に武豊騎手へとスイッチ。その後はスポット的な代打騎乗もありながら概ね継続的にコンビを組むこととなった。
後世に語り継がれる名勝負は数あれど、最もインパクトがあったのは2009年のヴィクトリアマイルだろう。当時はドバイ帰りの海外遠征明けながら単勝1.7倍の圧倒的1番人気に推され、一本かぶりの人気を背負っていた。もっとも前年の安田記念で牡馬相手に圧勝していただけに人気を集めるのは当然といえば当然であった。
レースはまさに武豊&ウオッカの一人舞台。ほぼ完璧なスタートを切ると先団の中ほどでピッタリと折り合い、抜群の手応えを保ったまま直線へ。残り400m地点まで馬なりのまま先頭に躍り出ると、あとはグングン伸びて後続を離す一方。結果2着のブラボーデイジーを7馬身、時計にしてなんと1秒2も置き去りにし、JRAマイルG1史上最大着差をつけるド派手な結末を演出したのだった。
この勝利によって獲得賞金は9億1608万9800円に到達。牝馬でそれまで最高だったホクトベガの生涯獲得賞金記録を抜いて単独トップに躍り出た。あまりの強さに武豊騎手は「牝馬という枠を超えている。この馬の背中は渡したくない」と最大級の賛辞を残している。
低迷期を救った牝馬との思い出は、名手の心に深く刻まれていることだろう。今年はスマートレイアーとのコンビで臨む武豊騎手。どんな手綱さばきを見せてくれるのか今から楽しみである。