【中山牝馬S(G3)展望】大本命アートハウスに「凡走」の法則!? 立場一変で連覇狙うクリノプレミアムも雲行き怪しいハンデ戦
11日、中山競馬場では中山牝馬S(G3)が行われる。ハンデ戦らしく、軽量馬の活躍が目立つこのレースを展望していきたい。
有力候補の筆頭は、素質馬のアートハウス(牝4歳、栗東・中内田充正厩舎)だ。
昨年は忘れな草賞(L)とローズS(G2)を制して、オークス(G1)で2番人気、秋華賞(G1)では4番人気に支持された。G1では期待を裏切る形となったが、改めて能力の高さを証明したのが年長馬に初めて挑んだ前走の愛知杯(G3)だ。
3か月ぶり実戦となった一戦は、スタートを決めて3番手の好位を追走。直線で外に持ち出されると、上がり最速の末脚を繰り出して、2着馬に1.3/4馬身差をつける完勝だった。
レース後、鞍上の川田将雅騎手は「収まりながら、我慢して、いい雰囲気で走れるようになった」「雰囲気が変わって、レースの内容が良くなりました」とコメントし、古馬になっての成長を感じ取った様子。その充実ぶりからも、ここでは頭一つ抜けているといっていいだろう。
ただし、不安要素がないわけではない。
まずデビューから一度も連勝がない点は多くのファンも気づいているだろう。初戦から1着と凡走を繰り返していて、2~4着は一度もない。このパターン通りなら今回は凡走の番となるが果たしてどうか。
また、初めて走る1800mの距離にも一抹の不安が残る。牝馬ながらデビューから一貫して2000m以上を使われてきたアートハウス。息の入らないペースになった時に最後のひと踏ん張りがきかなくなる恐れもあるだろう。実際に先日の中山記念(G2)でも大本命だったソーヴァリアントが似たパターンで馬群に沈んだ。ゴール前に急坂がある中山コースも未経験で、オークス以来2度目の長距離輸送というのも気になる。
そして最大の不安は、重いハンデを背負わされることが確実な点だろう。
昨年は同じ重賞2勝のテルツェットが56.5kg、スマイルカナとフェアリーポルカが56kgを課されたが、新たに適用された新ルールで基本斤量が1kg増えた今年は57kg以上になる可能性もある。アートハウスがこれまで経験した最大斤量は55kgで、酷量を克服できるかどうかが大きなカギとなりそうだ。
そんなアートハウスに対抗する有力候補の1頭が、昨年の覇者クリノプレミアム(牝6歳、美浦・伊藤伸一厩舎)である。
1年前は16頭立ての15番人気、もう少しで単勝万馬券という人気薄での激走だった。それまでオープンではサッパリだった戦績から昨年の優勝はフロック視もされたが、その後もG3レースでは好走が続いている。
直後の福島牝馬S(G3)は6番人気で2着、秋の京成杯AH(G3)は7番人気で3着、そして前走の中山金杯(G3)でも7番人気でラーグルフとハナ差の2着と、全て人気を大きく上回り、馬券に絡んでいる。
今回はさすがに2~3番人気が濃厚で、これまでと立場は大きく変わるはず。人気を背負う分、アートハウスをマークしつつ、他馬からもマークされることになるだろう。果たして今までと同じような脚が使えるか、鞍上のM.デムーロ騎手の手綱さばきにも注目が集まる。
スルーセブンシーズ(牝5歳、美浦・尾関知人厩舎)は、3歳時に紫苑S(G3)でファインルージュの2着に入った実績がある。
秋華賞で11着に敗れた後は自己条件の3勝クラスを勝ちあぐねていたが、前走・初富士S(3勝クラス)を勝って待望のオープン入りを果たした。
その前走は5か月ぶりの実戦で、中団から直線外を通っての差し切り勝ち。鞍上を務めたT.バシュロ騎手の「最後にスペースができてからは瞬発力を見せて、強かったです」というコメントからも分かる通り、小回りコース向きの切れる脚が最大の特長だ。特に中山では「3-1-2-0」と好相性で、昇級初戦でも勝ち負けは必至だろう。
昨秋の新潟牝馬S(OP)を含めて全5勝を重か稍重の荒れ馬場で挙げている道悪巧者のホウオウエミーズ(牝6歳、美浦・池上昌和厩舎)や、過去2年のクイーンS(G3)で馬券内に好走し、2走前の福島記念(G3)でも2着しているサトノセシル(牝7歳、美浦・堀宣行厩舎)あたりはパワーを要する馬場になれば浮上する。
この他には、逃げ切った近2走を含めて昨秋から4戦3勝のウインピクシス(牝4歳、美浦・上原博之厩舎)、4勝中3勝を挙げている1800m戦で巻き返しを狙うラルナブリラーレ(牝6歳、栗東・石坂公一厩舎)などもハンデ次第で上位進出の可能性があるだろう。
重いハンデを課されてもアートハウスが順当に勝利を収めるのか、それとも軽ハンデを味方に伏兵が台頭するのか。5月のヴィクトリアマイル(G1)へ向けても重要な一戦は、11日の15時45分に中山競馬場で発走予定だ。