エフフォーリア、アーモンドアイ、キタサンブラックの意外な共通点は? 藤岡佑介が公開謝罪、武豊の“棚ボタ”逃した三浦皇成、牝馬で皐月賞1番人気…忘れられない名脇役たち
2021年の年度代表馬エフフォーリア、18年と20年の年度代表馬アーモンドアイ、16年と17年の年度代表馬キタサンブラック、古くは1993年の年度代表馬ビワハヤヒデ……。これらの共通点は? そう「ウマ娘!」、ではありません。
実は、この4頭の年度代表馬はすべて本日「3月10日生まれ」なのです。
他にもジャパンC(G1)を勝ったスワーヴリチャード、キタサンブラックのライバルだったサトノクラウン、G1・2勝馬のショウナンパンドラにG1・3勝馬のロゴタイプ、オークス馬のエリンコートなどなど、まさに3月10日は名馬誕生の日と言えるかもしれません。
ですが、輝かしい名馬たちの記録がある反面、3月10日生まれには、現役時代にG1級の期待を背負いながらファンをヤキモキさせ続けた馬も数多くいます。
今回は、そんな主役になれなかった3月10日生まれの“名脇役”たちをご紹介したいと思います。皆さんも、ホロ苦い思いと共に記憶に残っている馬がいるのではないでしょうか?
・クリンチャー 菊花賞(G1)2着、天皇賞・春(G1)3着、帝王賞(G1)3着
昨年12月に惜しまれつつ引退した、近年を代表する名脇役。3歳からクラシックの有力馬でありながら、最後はダートの重賞戦線でタフに走り続けました。ディープスカイ産駒というところが、また渋い。
また、日本ダービー(G1)で敗れた際に当時の主戦だった藤岡佑介騎手が『netkeiba.com』の連載を通じて、自らの騎乗の不甲斐なさをつづった謝罪文が公開されたのは有名なエピソード。13着だったとはいえ9番人気でしたから、そこまですることもない気もしますが、この辺りが藤岡佑騎手の人柄の良さですよね。秋の菊花賞では10番人気2着と敗れはしましたが、しっかりと巻き返しに成功しています。
武豊騎手の騎乗停止によって、突然G1初制覇のチャンスが巡ってきた三浦皇成騎手の天皇賞・春の3着も含め、何かともどかしい思いをさせられた馬でした。
・ファンディーナ 皐月賞(G1)7着
実績的には重賞1勝馬なのですが、ここまで大きく注目されてクラシックを迎えた牝馬もそういないでしょう。
デビューからまったく危なげない3連勝。余裕の走りで5馬身も突き放したフラワーC(G3)の勝ち時計が、前日に行われた皐月賞トライアル・スプリングS(G2)の勝ち時計と0.3秒しか変わらないという牡馬トップクラスの実力を披露した結果、皐月賞では史上初となる牝馬の1番人気に推されました。
牡馬にこれといった主役がいなかったこともありますが、あのウオッカでさえ日本ダービーでは3番人気に留まったのですから、当時の“ファンディーナ祭り”の盛り上がりがわかるのではないでしょうか。
しかし、結果は7着……。その後はデビュー3連勝が嘘のようにパフォーマンスを落として引退してしまいました。今年になって産駒のエルチェリーナがデビュー戦を快勝。かつて母が制したフラワーCに進むそうなので、ぜひクラシックに進んで母の鬱憤を晴らしてもらいたいですね。
・ビービーガルダン 高松宮記念(G1)2着、スプリンターズS(G1)2着
「もうG1馬でいいじゃん!」思わずそう言いたくなるのが、ビービーガルダンではないでしょうか。スリープレスナイトやローレルゲレイロ、キンシャサノキセキにカレンチャンといったトップスプリンターと互角の戦いを演じながら、2度のG1・2着が共にハナ差という切なさテンコ盛り……。
スタート直前の放馬によって、結果的に引退レースになってしまった2011年のスプリンターズSでは、前走キーンランドC(G3)の1着カレンチャンと3着パドトロワがワンツーゴール。このレースで2着だったのが、ビービーガルダンです。「もし、この馬がいれば……」とは誰もが思ったことでしょう。
そんなビービーガルダンが改めて注目を集めたのが、それから9年後の2020年でした。当時、大人気だった『鬼滅の刃』の主人公、竈門炭治郎(かまどたんじろう)の着ている羽織が、「ビービー」の坂東牧場の勝負服にそっくりという意外な理由からでした。
・ロイスアンドロイス 天皇賞・秋(G1)3着、ジャパンC・3着
先月、チケゾーことウイニングチケットが33歳という大往生でこの世を去りました。冒頭でも登場したビワハヤヒデと、ナリタタイシンとの「BNW」は1993年のクラシックで激しいライバル対決を演じましたが、その名脇役がロイスアンドロイスです。
実はこの馬、天皇賞・秋とジャパンCで3着する実力がありながら、重賞を勝ったことがありません。とにかく勝ち味に遅い馬で、なんと未勝利でダービートライアルの青葉賞(当時OP)に挑戦しています。
今と同じく2着までに日本ダービーの優先出走権が与えられた青葉賞ですが、実は日本ダービーでは未勝利馬の出走が認められていません。従って、ロイスアンドロイスが本番に進むには実績馬を押し退けて勝つしかなかったのです。
しかし、結果は3着。「最強の未勝利馬」なんて呼ばれることもありました。
次走の未勝利戦で5馬身差の圧勝を飾った際は「秋こそ大舞台で見たい馬」「未完の大器が本格化」などと期待されたのですが、500万下(1勝クラス)でまさかの3連敗を喫してしまうのがロイスアンドロイスという馬。それなのに、格上挑戦のセントライト記念(G2)で2着して菊花賞に出走しているのですから、強いのか弱いのか……本当にわからない馬でした。
他にもエイシンツルギザンやエアトゥーレ、さらにはラグビーボールに、今やウマ娘になってG1馬よりも有名なユキノビジンなどなど、3月10日生まれの名脇役を挙げれば枚挙に暇がありません。
エフフォーリア、アーモンドアイ、キタサンブラック、ビワハヤヒデといった多くのスターホースが生まれている3月10日ですが、一方でその名を目にしただけで切なくなるような脇役たちがいたことも覚えておきたいですね。